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まあ思いついたことをつらつらと書き綴っています(写真は奥多摩から見た富士山)。


by M.M@Kanagawa
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領土問題と領域概念

最近,尖閣諸島と竹島(独島)をめぐる領有権問題がクローズアップされ,中国・韓国両国との外交関係悪化,世論の沸騰といったことが話題となっています。

この情勢については,メディアでも頻繁に取り上げられているので改めてここで説明するまでもないと思いますが,ひとつこの問題を見る上で留意すべきことがあります。

それは,韓国と中国とでは対日姿勢に大きな違いがあるという点。

表面的に見れば,両国ともに共通して反日的なナショナリズムを鼓舞し,自国の主張を押し通そうとうする強引さから似た者同士という印象を強く受けますが,韓国と中国では領域に対する基本的な考え方に大きな違いがあります。

今回の韓国の場合,李明博(イ・ミョンバク)大統領が自らの政治的地位を維持したいがための政治的パフォーマンスに端を発するナショナリズムの扇動であって,非常に底の浅いものであると私は考えています。
反日感情を自己の保身に利用しているだけであって,内政での数々の失態を強硬外交によって支持率を挽回しようという使い古された政治手法に韓国国民が振り回されているといった感があります。

こういう外交姿勢は,韓国政府が自国の品位を自ら汚す行為なわけですが,そのようなことも考えが及ばないほどに見境がなくなっています。

ところが中国の場合は,単なる政治的パフォーマンスでは片付けられない思想的背景があると思います。

日本では尖閣諸島問題ばかりが注目されていますが,中国は日本以外の国々とも激しい領有権をめぐる紛争を繰り広げています。

主だったところでは,ASEAN諸国,インド,パキスタン,ブータンなどの国々と未だに国境線をめぐって事あるごとに衝突しています。
中国とその周辺国が表示された地図を見てみると,ところどころ国境線が点線になっているところがありますが,そこが未だに国境問題未解決の地域です(地図には明示されませんが,海上における国境問題も当然のことながら存在します)。

【関連情報】
東アジア地図(GoogleMaps)

中国は,第二次世界大戦後にも幾度となく国境紛争を繰り広げていたりますが,主だったものを挙げると以下のようなものがあります(領有権をめぐって実際に武力衝突が起こった事件)。
1969年 中ソ国境紛争(ダマンスキー島事件あるいは珍宝島事件)
  旧ソ連とのウスリー川の中州である島の領有権をめぐる武力衝突
1959~62年 中印国境紛争
  インドとのカシミール地方の領有権をめぐる紛争
1984~89年 中越国境紛争
  ヴェトナムとの国境地帯における高地の専有をめぐる武力衝突

日本に対しては未だに武力を行使するまでには至っていませんが,中国は国境問題を武力によって解決を図ろうとしてきた過去があります。
国境問題に対して直接行動に出るということは,それだけ中国が領有権問題に対してシビアな国であることを示しています。

その中国がなぜ尖閣諸島問題で実力行使に出ないのか。

それは,中国海軍の実力がイマイチなのもありますが,やはり日本の後ろ盾となっているアメリカを警戒して手を出すのを躊躇しているというのが大きいでしょう。
それに実力行使が国際世論に与える影響を考えると,中国にとってマイナス面が大きいというのもあるでしょう。

つまり,中国は韓国のように「日本憎し」という感情に支配された行動として尖閣諸島問題に対しているわけではないのです。

それに中国は,自国は世界の中心で最も進んだ文明国であり,周辺の国々は中国に従うべき存在であるという思想を長きにわたって保持してきた国です。
このような思想を「中華思想」(中華とは,世界の心に燦然と咲き誇る「=はな」という意味です)といいます。

彼ら中国人は,中国の周りに住まう夷狄(いてき=野蛮人)は中華の恩恵によって文化・文明を享受しているのであり,文明国である中国に従うのは当然という発想を伝統的に持っていました。

このような歴史的・思想的バックボーンを持つ中国人は,本来的に「領域」「領土」という概念を持ち合わせていません。

じゃあ,なんでやたらいろんなところで領有権を主張するんだ?という疑問が起こってくると思いますが,考えられることしては,以下のことが挙げられると思います。

1) 世界は自分たちのものという意識が根底にあるので,特に中国とその周辺地域にあるものは必要に応じて所有権を主張できると考える。
2) 中国は周辺諸国に対する指導的立場の国(春秋戦国時代風に言うと「覇者」)なので,中国の意向に従うのが当たり前と考えている。
3) 19世紀の欧米列強の侵略以降,欧米流の所有権の概念が移植され,それに伴って「領域」「領土」という考え方も浸透していった。

もともとの「中華」という世界観を欧米流の領域概念によって補強したってところですかね。

そして,中国人は面子を非常に重んじることでも有名です。面子を潰されることは中国人にとって許すべからざる屈辱です(中国の文化的影響を強く受けている韓国も少なからずこの傾向があります)。
したがって,日中戦争は中国の面子を叩き潰した歴史的事件なので,彼らはいつまでも戦時中の日本の所業を非難し続けるわけです。

日本に限らずあらゆる国にとって,外交上お付き合いしていく相手としての中国は非常に厄介な国と言えます。

特に領有権問題で中国から譲歩を引き出すのは並大抵のことではありませんが,まったく方策がないというわけでもないと思います。

少なくとも下手にこちらが大騒ぎして,中国の面子を潰してしまうような行動をとることは得策とはいえません。

決して卑屈になる必要はないのですが,まずは相手の特質を知り,対処の仕方を考えていくことは非常に重要だと思います。

先日の丹羽大使が乗った大使館車両が襲撃された事件についても,中国政府の面子に訴えかけることが迅速な犯人逮捕につながるものと思います。

やり方次第では,意外と領有権問題もすんなりと解決へ向けて進展していく可能性はあると思います。
それは,あくまで中国政府を立ててということが前提となるとは思いますが・・・。
# by mmwsp03f | 2012-08-29 12:14 | 政治・国際事情

職業選択の不自由

私の知り合いに川崎市内に薬局を数店舗経営している人がいるのですが,その人が先日,求人をしてもなかなかいい人が来てくれないと漏らしていました。

聞くところによると,薬剤師の人手不足で求人をしているそうなんですが,大学の薬学部に募集をかけてもほとんど応募がないらしく,人材紹介会社にも数社へ声をかけているそうなんですが,なかなか紹介をしてこないそうです。

それで,ようやく人材紹介会社が以前個人で薬局を経営していたという56歳の人を紹介してきたので,とりあえずためしに雇ってみた(おそらく紹介予定派遣)ところ,仕事はなかなか覚えないし,自分のやり方を頑なに守り,職場環境の変化に適応できない人だったらしく,結局やめてもらったとのこと。

待遇としては,年棒500万円で中小企業としては悪くはないほうです。

近年,医薬分業の進展によって調剤薬局の数が増えたことにより,薬剤師不足が叫ばれるようになっています。
その理由としては,薬学部の修了年限が4年から6年に延長され,一時的に人手不足になっているという指摘もありますが,やはりそれが主要因とは言えないでしょう(それにこれは一時的な供給減ですし)。

厚生労働省の調査によると,平成6年~22年までの薬剤師数(総数)は統計年次毎9,000人前後増えています。

【関連情報】
医師・歯科医師・薬剤師調査=薬剤師数の年次推移(平成6年~平成22年),業務の種別(CSVファイル)(e-stat: 政府統計の総合窓口)

薬剤師のうち薬局勤務者が圧倒的多数で,平成22年のみで見てみると約53%を占めています。

年々薬剤師は増え続けているわけですが,それなのに中小の薬局で薬剤師不足の声が聞かれるということは,企業・事業所によって就業する薬剤師が遍在していることを示しています。
中小の薬局よりもマツモトキヨシやハックドラックのような大手の薬局・薬店を希望したり,より便利な場所の薬局・薬店への就業を希望したりしているということなのでしょう。

最近では,学生の大企業志向に少し変化が見られたようで,中小企業の合同企業説明会に積極的に参加する就活生が増えてきたとのことです。
そんなこともあって,先の薬局経営者の知り合いに,大学と積極的につながりをもつ意味からインターンシップを導入してみたらどうか?というようなことも言ってみたのですが,あまり乗り気ではないご様子。

大学に求人出しても応募はないし,人材紹介会社はろくな人を紹介してこないしで,なんとなくあきらめムードが漂っていましたねえ。

ちなみに,人材紹介会社(人材派遣会社含む)を介して就職・転職に成功したという人はごく一握りで,人材紹介会社に登録してもほったらかしのままという人がかなりたくさんいます。
これら紹介会社は経歴から確実に採用されそうで高く売り込みができそうな就職・転職希望者にだけ積極的にアプローチをし,登録者の資質・人柄などをきちんと見据えて,企業に売り込むことをしていません。

かの薬局経営者の知人は,人材紹介会社は「金だけはしっかりとっていくんだよね」と漏らしていましたが,このようなことを口にするということは,件の人材紹介会社はその後のフォローをちゃんとしていなかったのでしょう。

しかし,それと同時に薬学部の就活生がぜんぜん見向きもしないことにも失望を隠せないといった感じでもありました。

就職難の陰には,実は有名な大手企業へ就職・転職希望者が集中してしまい,そこからあぶれてしまった人たちが就職できなかったといったこともあると思います。

中には「仕方がないから」といったような消極的な姿勢で中小企業をまわる人もいるようですが,そういうことだと,その企業のいいところはなかなか見えないと思いますし,企業側からも良い人財とみなしてもらえないでしょう。

就職・転職希望者の行動によって採用する側を失望させ,積極的な雇用への取り組みを控えるムードを作り出してしまっていることもあるということを考えてみてもらいたいと思います。

自分たちの行動が,自らの就業機会を奪ってしまうこともあるのだなあと考えさせられるお話でした。
# by mmwsp03f | 2012-07-18 12:26 | 日々雑感
去る6月16日,大飯原発再稼働が正式決定されましたね。

すでに野田首相は,正式決定より前の6月8日に記者会見で「国民生活を守る」という理由により大飯原発再稼働すべきという自らの判断を表明していましたから,今回はあえて記者会見は行わないとのことで,今回は決定のみが報道各社に伝えられる形となっています。

【関連情報】
野田首相会見 冒頭 大飯原発3、4号機の再稼働方針を表明、理解求める(Youtube-SankeiNews)
野田首相、記者会見せず=大飯再稼働を決断も(時事通信社-Exciteニュース)
<大飯再稼働決定>経済界に懸念なお(毎日新聞-Yahoo!ニュース)

大飯原発再稼働についてはかなりの反発が予想されていましたが,その反面原発再稼働を求める声が経済界を中心に起こっており,野田総理曰く「国論を二分する」事態をなっています。

しかし,原発再稼働を求める声の中には「安全が確保できるなら」という前提条件つきでの賛成であり,積極的に再稼働を求めているのは少数派であると考えられます。

そこで首相は,「唯一絶対の判断の基軸」であり,「国として果たさなければならない最大の責務」として「国民生活を守ること」として,その「国民生活を守る」ことの骨子を2つ挙げて説明しています。

1) 時代の子どもたちを守るために,福島原発事故のような事態は決して起こさない
2) 計画停電,電気料金の大幅な高騰などの日常生活に悪影響を及ぼす事態をできる限り避ける

野田首相が言う「福島原発事故のような事態を決して起こさない」ことというのは,考えられる原発の耐震性・津波に対する対策を講じているということであって,現実に原発の安全性が確保されているということではありません。

安全性については「絶対というものではない」とコトワリを入れています。
コトワリを入れるまでもなくあらゆることについて言えることなので余計な発言のように思えますが,これは「あの時は大丈夫だといったじゃないか」というバカらしいツッコミに対する伏線としての発言です。

さて,野田首相の会見での発言内容を聞いてお分かりの通り,政府は原発維持を基本方針としていることが明らかにされています。
原発の信頼性回復を前提とする対策を講じると発言していることから,そのことは明らかですね。

そして,2番目に挙げている「国民生活を守る」ことの主旨として,日常生活への悪影響を回避することが挙げられています。

結果,原発なくして日本経済,日常生活は成り立たないので,原発の安全性を追究し続けるから,原発再稼働は実施するという論理が成り立つことになります。

首相は「再生可能エネルギー」の開発も推進し,原発依存を極力なくしていくということを言っていますが,それ以上の具体的なことは何一つ示していません。

このことに対して,当然の反応として原発再稼働反対デモが首相官邸前で行われました。
首相官邸前で300人が大飯再稼働反対デモ(日本経済新聞-2012/6/16 12:01)

大飯原発の再稼働に反対する市民団体らによるデモが16日午前、首相官邸前で開かれた。集まった約300人の参加者が再稼働を決めた政府、地元自治体に抗議した。

 小雨が降る中、「大飯原発再稼働反対」「原発NO!再稼働NO!」などと書かれた横断幕やプラカードを掲げた参加者は「首相は原発再開をやめろ」と官邸に向かって訴えた。

 午前10時すぎには、デモを呼びかけた市民団体「再稼働反対! 全国アクション」のメンバーが、野田佳彦首相に対し再稼働反対を求める要望書を内閣府の職員に手渡した。

 山梨県から来たという自営業の男性(47)は「事故があったにもかかわらず、また『原子力ムラ』の論理で再稼働が進められようとしている。許せない」と憤りをあらわにしていた。
なぜ,このようなデモが起こり,批判が相次ぐのか?
それは皆さんもお分かりのように,原発維持が大前提となっている発言だからです。

再生可能エネルギーの開発といったところで,原発依存を極力減らすというだけで脱原発を目指す発言ではないところが透けて見え,本気で取り組む姿勢が見られないから,大きな反発を呼ぶことになります。

去年の震災の経験から,原子力は現在の我々には手におえる代物ではないことが明らかになったはずですが,それでもなお原発維持にこだわるのでしょうか?

それは,恐らく下記の理由によるものと考えられます。

1) 原子力に代わる非常に大きなエネルギー供給システムが存在しない(事実はどうあれ,原発維持派にとって最も効率的で安価な電力供給システムということ)
2) これまでの原子力発電の開発コストに対する相応の見返りをまだ享受していない(日本の原子力発電が軌道に乗ったのはせいぜい20年ぐらいの期間で,それまでかけた労力をまだ回収していないという思いがある)
3) 新たな再生可能エネルギーを開発するコストをかけたくない(コストをかけただけのリターンが期待できない)

いずれ,現存する原発は順次老朽化による廃炉をしていかなければならないのですが,少なくとも全基廃炉になるまでは原子力発電をやめる気ないのでしょう。
しかも今の調子だと,原発の廃炉も「まだ大丈夫,まだ大丈夫」と先送りにされそうな感じです。

一方,反原発の立場はどうでしょうか?

反原発の急先鋒と目されていた政治家の一人,橋下徹大阪市長が期間限定での再稼働を「事実上容認」したことで,一挙に再稼働への流れが出来上がった気がします。

この「事実上容認」によって,橋下市長は主張に一貫性がないなど各方面から批判を受けることになりますが,現実的に考えれば期間限定での再稼働はやむなしといったところでしょう。

単に反対を繰り返しているだけでは何事も解決しないので,一定の譲歩をしたということでしょう。

橋下市長は,いわば交渉のセオリーに従っただけのことで,最初は強硬に反対して政府から一定の譲歩を得ようとしていたようですが,結局は自分が譲歩する結果となってしまいました。

しかも,彼の「事実上容認」が原発維持派に利用され,周辺自治体の首長も再稼働の流れに身をゆだねることになってしまったような印象です。

限定的な再稼働によって電力を一時的に確保するが,その間に漸次原発を減らして最終的にはゼロにする戦略を構築していくように国を動かしていくというのが,恐らく橋下市長の目論見だったと思いますが,今のところ,その効果は見えてきません。

経団連の米倉会長は,橋下市長の夏季限定再稼働要求に対して「経済活動、事業(の実態)を全然ご存じない発言だ」と批判したとのことですが,彼が経済活動全般を見通したうえでの発言とは思えません。

さらに言えば,「事業を全然ご存じない」の「事業」とは,この場合大手電力会社の「事業」のことであり,大手電力会社の「事業」と深く結びついた企業・団体の「事業」のことです。

なぜ,そんなことが判るかって? そりゃあ,文脈からですよ。
電力が足りない時期に限定した再稼働容認に対する批判なわけですから,原発はそんな簡単に起動させたり制止させたりできないという意味にとれます。
一般企業は電力を供給してもらえれば「事業」に影響はないわけですし,原発を止めたり稼働させたりする立場の人たちの「事業」であることがわかります。
それに,これまでの発言からも,米倉会長に(トータルな)経済・社会を語るだけの力がないのは明らかですし…。

特定の「経済活動」,特定の企業・団体の「事業」を前提とした話をしているから原発維持の主張を崩さないわけですね。
まずは,このような既得権益を保持している勢力の論理を突き崩すための方法を突きつけることが,反原発を唱える方々が一歩前進するために必要なことであると私は思います。
# by mmwsp03f | 2012-06-17 12:53 | 政治・国際事情