最近,尖閣諸島と竹島(独島)をめぐる領有権問題がクローズアップされ,中国・韓国両国との外交関係悪化,世論の沸騰といったことが話題となっています。
この情勢については,メディアでも頻繁に取り上げられているので改めてここで説明するまでもないと思いますが,ひとつこの問題を見る上で留意すべきことがあります。
それは,韓国と中国とでは対日姿勢に大きな違いがあるという点。
表面的に見れば,両国ともに共通して反日的なナショナリズムを鼓舞し,自国の主張を押し通そうとうする強引さから似た者同士という印象を強く受けますが,韓国と中国では領域に対する基本的な考え方に大きな違いがあります。
今回の韓国の場合,李明博(イ・ミョンバク)大統領が自らの政治的地位を維持したいがための政治的パフォーマンスに端を発するナショナリズムの扇動であって,非常に底の浅いものであると私は考えています。
反日感情を自己の保身に利用しているだけであって,内政での数々の失態を強硬外交によって支持率を挽回しようという使い古された政治手法に韓国国民が振り回されているといった感があります。
こういう外交姿勢は,韓国政府が自国の品位を自ら汚す行為なわけですが,そのようなことも考えが及ばないほどに見境がなくなっています。
ところが中国の場合は,単なる政治的パフォーマンスでは片付けられない思想的背景があると思います。
日本では尖閣諸島問題ばかりが注目されていますが,中国は日本以外の国々とも激しい領有権をめぐる紛争を繰り広げています。
主だったところでは,ASEAN諸国,インド,パキスタン,ブータンなどの国々と未だに国境線をめぐって事あるごとに衝突しています。
中国とその周辺国が表示された地図を見てみると,ところどころ国境線が点線になっているところがありますが,そこが未だに国境問題未解決の地域です(地図には明示されませんが,海上における国境問題も当然のことながら存在します)。
【関連情報】
■東アジア地図(GoogleMaps)
中国は,第二次世界大戦後にも幾度となく国境紛争を繰り広げていたりますが,主だったものを挙げると以下のようなものがあります(領有権をめぐって実際に武力衝突が起こった事件)。
日本に対しては未だに武力を行使するまでには至っていませんが,中国は国境問題を武力によって解決を図ろうとしてきた過去があります。
国境問題に対して直接行動に出るということは,それだけ中国が領有権問題に対してシビアな国であることを示しています。
その中国がなぜ尖閣諸島問題で実力行使に出ないのか。
それは,中国海軍の実力がイマイチなのもありますが,やはり日本の後ろ盾となっているアメリカを警戒して手を出すのを躊躇しているというのが大きいでしょう。
それに実力行使が国際世論に与える影響を考えると,中国にとってマイナス面が大きいというのもあるでしょう。
つまり,中国は韓国のように「日本憎し」という感情に支配された行動として尖閣諸島問題に対しているわけではないのです。
それに中国は,自国は世界の中心で最も進んだ文明国であり,周辺の国々は中国に従うべき存在であるという思想を長きにわたって保持してきた国です。
このような思想を「中華思想」(中華とは,世界の中心に燦然と咲き誇る「華=はな」という意味です)といいます。
彼ら中国人は,中国の周りに住まう夷狄(いてき=野蛮人)は中華の恩恵によって文化・文明を享受しているのであり,文明国である中国に従うのは当然という発想を伝統的に持っていました。
このような歴史的・思想的バックボーンを持つ中国人は,本来的に「領域」「領土」という概念を持ち合わせていません。
じゃあ,なんでやたらいろんなところで領有権を主張するんだ?という疑問が起こってくると思いますが,考えられることしては,以下のことが挙げられると思います。
1) 世界は自分たちのものという意識が根底にあるので,特に中国とその周辺地域にあるものは必要に応じて所有権を主張できると考える。
2) 中国は周辺諸国に対する指導的立場の国(春秋戦国時代風に言うと「覇者」)なので,中国の意向に従うのが当たり前と考えている。
3) 19世紀の欧米列強の侵略以降,欧米流の所有権の概念が移植され,それに伴って「領域」「領土」という考え方も浸透していった。
もともとの「中華」という世界観を欧米流の領域概念によって補強したってところですかね。
そして,中国人は面子を非常に重んじることでも有名です。面子を潰されることは中国人にとって許すべからざる屈辱です(中国の文化的影響を強く受けている韓国も少なからずこの傾向があります)。
したがって,日中戦争は中国の面子を叩き潰した歴史的事件なので,彼らはいつまでも戦時中の日本の所業を非難し続けるわけです。
日本に限らずあらゆる国にとって,外交上お付き合いしていく相手としての中国は非常に厄介な国と言えます。
特に領有権問題で中国から譲歩を引き出すのは並大抵のことではありませんが,まったく方策がないというわけでもないと思います。
少なくとも下手にこちらが大騒ぎして,中国の面子を潰してしまうような行動をとることは得策とはいえません。
決して卑屈になる必要はないのですが,まずは相手の特質を知り,対処の仕方を考えていくことは非常に重要だと思います。
先日の丹羽大使が乗った大使館車両が襲撃された事件についても,中国政府の面子に訴えかけることが迅速な犯人逮捕につながるものと思います。
やり方次第では,意外と領有権問題もすんなりと解決へ向けて進展していく可能性はあると思います。
それは,あくまで中国政府を立ててということが前提となるとは思いますが・・・。
この情勢については,メディアでも頻繁に取り上げられているので改めてここで説明するまでもないと思いますが,ひとつこの問題を見る上で留意すべきことがあります。
それは,韓国と中国とでは対日姿勢に大きな違いがあるという点。
表面的に見れば,両国ともに共通して反日的なナショナリズムを鼓舞し,自国の主張を押し通そうとうする強引さから似た者同士という印象を強く受けますが,韓国と中国では領域に対する基本的な考え方に大きな違いがあります。
今回の韓国の場合,李明博(イ・ミョンバク)大統領が自らの政治的地位を維持したいがための政治的パフォーマンスに端を発するナショナリズムの扇動であって,非常に底の浅いものであると私は考えています。
反日感情を自己の保身に利用しているだけであって,内政での数々の失態を強硬外交によって支持率を挽回しようという使い古された政治手法に韓国国民が振り回されているといった感があります。
こういう外交姿勢は,韓国政府が自国の品位を自ら汚す行為なわけですが,そのようなことも考えが及ばないほどに見境がなくなっています。
ところが中国の場合は,単なる政治的パフォーマンスでは片付けられない思想的背景があると思います。
日本では尖閣諸島問題ばかりが注目されていますが,中国は日本以外の国々とも激しい領有権をめぐる紛争を繰り広げています。
主だったところでは,ASEAN諸国,インド,パキスタン,ブータンなどの国々と未だに国境線をめぐって事あるごとに衝突しています。
中国とその周辺国が表示された地図を見てみると,ところどころ国境線が点線になっているところがありますが,そこが未だに国境問題未解決の地域です(地図には明示されませんが,海上における国境問題も当然のことながら存在します)。
【関連情報】
■東アジア地図(GoogleMaps)
中国は,第二次世界大戦後にも幾度となく国境紛争を繰り広げていたりますが,主だったものを挙げると以下のようなものがあります(領有権をめぐって実際に武力衝突が起こった事件)。
1969年 中ソ国境紛争(ダマンスキー島事件あるいは珍宝島事件)
旧ソ連とのウスリー川の中州である島の領有権をめぐる武力衝突
1959~62年 中印国境紛争
インドとのカシミール地方の領有権をめぐる紛争
1984~89年 中越国境紛争
ヴェトナムとの国境地帯における高地の専有をめぐる武力衝突
日本に対しては未だに武力を行使するまでには至っていませんが,中国は国境問題を武力によって解決を図ろうとしてきた過去があります。
国境問題に対して直接行動に出るということは,それだけ中国が領有権問題に対してシビアな国であることを示しています。
その中国がなぜ尖閣諸島問題で実力行使に出ないのか。
それは,中国海軍の実力がイマイチなのもありますが,やはり日本の後ろ盾となっているアメリカを警戒して手を出すのを躊躇しているというのが大きいでしょう。
それに実力行使が国際世論に与える影響を考えると,中国にとってマイナス面が大きいというのもあるでしょう。
つまり,中国は韓国のように「日本憎し」という感情に支配された行動として尖閣諸島問題に対しているわけではないのです。
それに中国は,自国は世界の中心で最も進んだ文明国であり,周辺の国々は中国に従うべき存在であるという思想を長きにわたって保持してきた国です。
このような思想を「中華思想」(中華とは,世界の中心に燦然と咲き誇る「華=はな」という意味です)といいます。
彼ら中国人は,中国の周りに住まう夷狄(いてき=野蛮人)は中華の恩恵によって文化・文明を享受しているのであり,文明国である中国に従うのは当然という発想を伝統的に持っていました。
このような歴史的・思想的バックボーンを持つ中国人は,本来的に「領域」「領土」という概念を持ち合わせていません。
じゃあ,なんでやたらいろんなところで領有権を主張するんだ?という疑問が起こってくると思いますが,考えられることしては,以下のことが挙げられると思います。
1) 世界は自分たちのものという意識が根底にあるので,特に中国とその周辺地域にあるものは必要に応じて所有権を主張できると考える。
2) 中国は周辺諸国に対する指導的立場の国(春秋戦国時代風に言うと「覇者」)なので,中国の意向に従うのが当たり前と考えている。
3) 19世紀の欧米列強の侵略以降,欧米流の所有権の概念が移植され,それに伴って「領域」「領土」という考え方も浸透していった。
もともとの「中華」という世界観を欧米流の領域概念によって補強したってところですかね。
そして,中国人は面子を非常に重んじることでも有名です。面子を潰されることは中国人にとって許すべからざる屈辱です(中国の文化的影響を強く受けている韓国も少なからずこの傾向があります)。
したがって,日中戦争は中国の面子を叩き潰した歴史的事件なので,彼らはいつまでも戦時中の日本の所業を非難し続けるわけです。
日本に限らずあらゆる国にとって,外交上お付き合いしていく相手としての中国は非常に厄介な国と言えます。
特に領有権問題で中国から譲歩を引き出すのは並大抵のことではありませんが,まったく方策がないというわけでもないと思います。
少なくとも下手にこちらが大騒ぎして,中国の面子を潰してしまうような行動をとることは得策とはいえません。
決して卑屈になる必要はないのですが,まずは相手の特質を知り,対処の仕方を考えていくことは非常に重要だと思います。
先日の丹羽大使が乗った大使館車両が襲撃された事件についても,中国政府の面子に訴えかけることが迅速な犯人逮捕につながるものと思います。
やり方次第では,意外と領有権問題もすんなりと解決へ向けて進展していく可能性はあると思います。
それは,あくまで中国政府を立ててということが前提となるとは思いますが・・・。
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by mmwsp03f
| 2012-08-29 12:14
| 政治・国際事情