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まあ思いついたことをつらつらと書き綴っています(写真は奥多摩から見た富士山)。


by M.M@Kanagawa
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成熟したネット社会における未熟な思考

昨日のブログでは,根拠薄弱というよりは関係性希薄な事実を並べて自己の主張を補強しようという,はなはだ論理的ではない論旨をもってセンセーショナルな言説を振り回す例をご紹介しましたが,今回はそれとは真逆の例を取り上げたいと思います。

疑似科学・オカルト批判で有名な大槻義彦早稲田大学名誉教授が,アグネス・チャンが経営する健康食品・開運グッズなどを販売する会社の商品の効能等について疑わしい点を指摘して,「はっきりとした霊感商法である」と断じるブログ記事を公表して話題になっています。

【関連情報】
【アグネス チャン の霊感商法】(大槻義彦のページ:8月29日)
【アグネス チャン その後】(大槻義彦のページ:8月29日)
【アグネス チャンの霊感商法、余話】(大槻義彦のページ:8月29日)
【アグネス チャンの謎】(大槻義彦のページ:8月30日)
アグネスの言い訳に大槻教授激怒!「霊感商品を買った人にどう謝罪するのか?」(ネットコラム - エキサイトニュース)

かなり辛辣なアグネス批判が展開されていますが,大槻氏の指摘は明確な根拠を示した論理的なもので,この批判に対してアグネス・チャン氏は,自らの公式ブログにて謝罪と購入者には返品・返金を実施する旨を下記のように公表しています(ただし,8月31日10:00時点での修正された内容)。
楽天のショッピングサイト「チャンズ」で販売していたクリスタルのブレスレットと五色霊芝に関して、お騒がせしている事を心からおわび申し上げます。「チャンズ」を運営・管理している事務所のミスであり、私にも不本意な事です。
商品を購入されたお客様はクリスタルのブレスレット5名、五色霊芝3名でした。皆様にはおわびの手紙と共に返品、返金のご案内を送らせて頂きました。

ファンの皆さん、仕事関係者はじめ、皆さまにご心配をおかけし、大変申し訳ございませんでした。
これからも皆さんに信頼され、愛される仕事と活動が出来るように私も、スタッフ一同と共に気を引き締めて、気をつけて参りたいと思います。

【関連情報】
アグネスちゃんこ鍋(アグネス・チャン オフィシャルブログ)
アグネス・チャン“霊感商法騒動”、ブログで全面謝罪(Yahoo!ニュース:8月31日)

大槻氏の批判がかなり大きな反響を呼んだからということもあるでしょうが,下手な言い訳で自己弁護をせずに謝罪をしているところは,賢明であると言えるでしょう。

しかし,その後の対応の仕方も大槻氏からツッコミを入れられて,謝罪文の訂正をしているようです。

そこいら辺の展開については,上記のブログ記事やWebニュースをご覧いただくとして,実は今回私が感心したのは別のところ。

大槻氏は,アグネス・チャン氏が様々な権力を利用して自己保身を図っていると主張するブログの読者からのメールに対して,下記のように答えています。
彼女の背景に『中国共産党、創価学会、大手マスコミ』がある、とのご指摘ですが、この意味は明瞭ではありません。彼女はキリスト教信者である、と自分を紹介している(私への私信)のですが、そうだとすると中国共産党や創価学会と密接な関係にあるとは思えません。

私は、科学者・教育者として、世にはびこる迷信・オカルト・不正義などを批判・排除していき、子供の教育や社会の進歩を目指す活動をしてきました。しかし、それ以外の個人的な思想・信条・哲学を槍玉にあげたことはありません。
アグネス チャンがどのような社会活動・宗教活動をしようと、それは個人の人格にも関したことですから、批判は控えます。

非常に科学的視点に立った論理的な回答だと思います。
根拠薄弱な論を持って批判する相手を貶めることなく,はっきりと論点を明示して妥当な指摘とは思われない筋違いな主張を退けているところは,大槻氏らしいといえるのではないでしょうか。

さらに,大槻氏のブログ記事【アグネス チャンの謎】の最後に,
なお、私どもの批判に対して、様々な意見がWEB上を飛び交っている。それだけ反響が大きかったと言えるのだが、その中で見逃せない文章が多数見られる。それは、アグネス批判をするあまり、民族差別・女性差別的な言葉である。
この成熟した社会だからこそ、この種の霊感商法批判も自由にできるのだが、それを逆用して差別的言動をするのは許せない。

と書かれてあります。

ネット社会は成熟してきているといわれますが,それを利用する人間はまだまだ未熟です。
このような特定の対象を批判する言説が登場すると,その本来の論点から逸脱して批判する相手を貶めようとする人々が現れるところが,ネット社会の現状を物語っています。

大槻氏が批判しているのはアグネス・チャン氏の行為であって,彼女の人格や信条を否定しているわけではありません。
また,彼女の属性である民族・性別などをとりあげて,「だから中国人は・・・」とか「だから女は・・・」とか一般化して語ることも大槻氏の批判するところです。

人間の精神・思考というものは,技術の進歩に伴って即発達するものではなく,技術の進歩との間にはタイムラグが生じるものですが,しかし差別意識・根拠薄弱な言説というものはいつの時代にも存在することからも,やがて後追いで改善されるものではありません。

やはり,科学的思考力・論理性というものは自助努力によって改善を図っていく他はないというのが正直なところ。
その際に参考になるのが,大槻氏の主張であろうと思います。

ただし,だからといって大槻氏の主張を鵜呑みにする必要はありません。
鵜呑みにすること。
それが科学的思考力・論理性を阻む原因なのですから・・・。

当然,大槻氏の主張も批判的に検討されるべきで,ご本人もそれを望んでおられることと思います。

論理的に考えることは,非常に面倒くさいものです。
しかしそれを放棄したとき,そのツケは自分にめぐってくるのだということを我々は絶えず意識することが必要なのです。
by mmwsp03f | 2010-08-31 12:41 | 社会問題一般