浸透しないワークライフバランス
2010年 06月 30日
皆さん,「ワークライフバランス」ってご存知ですか?
前回,最後にちらっと登場してきた言葉なので,ちょっとこれについて詳しく取り上げてみたいと思います。
「ワークライフバランス」とは,「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる」(ワークライフバランス憲章・2007年12月)ことを指しているわけですが,意外と知らない人多いんですよね。
【関連情報】
仕事と生活の調和推進(ワーク・ライフ・バランス)ホームページ(内閣府 仕事と生活の調和推進室)
内閣府が全国の20歳以上60歳未満の男女2500人を対象に実施した「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)と顧客ニーズに関する意識調査について」(2009年3月時点)というWeb調査の結を見ても,世間的に知っている人がかなり少ないことがわかります。
全体では,「ワークライフバランス」という言葉と意味する内容を共にわかっていると答えた人は13.4%しかおらず,まったく知らないと答えた人は半数以上の51.8%に上ります。
いわゆる大企業では,研修等で「ワークライフバランス」への周知をはかり,長時間労働を抑制するための措置をそれなりにとっているようです。それでも回答した大企業で就業している人たちのうち,理解しているのは3割強でしかありません。
それが中小企業になるとガクンと下がります。
500人未満の事業所では,回答者のおよそ半数がまったく知らないと答えています。
これは「ワークライフバランス」の概念自体を企業側が知らない,あるいは知っていても労働者に周知させる努力をしている企業が非常に少ないということを示しています。
それに,官公庁の職員でも「ワークライフバランス」を知っている人は少なく12.9%しかいません。
47.6%はまったく知らないと回答しています。
企業に指導する側の人間がこれではねえ。┐( ̄へ ̄)┌
うちの会社は余裕がないのに,労働者に余裕与えてどうなるんだと考える経営者も少なくないと思いますが,実はこの考え方が更なる余裕を奪っていくことにもなりかねない。
日本は明治維新以来,追いつき追い越せの精神でガムシャラにがんばってきた伝統があります。
ところが,何でもかんでもガムシャラにがんばればよいというものではなく,それがかえって自らを追い詰めて,行き詰まってしまうこともあります。
それに無駄な努力っていうものもあるんですよね。
特に日本の企業風土には,「無駄な努力」を推奨する傾向が強い。
良くあるのが,定時に帰宅することを阻む風潮。
「皆,まだ仕事しているのにあんただけ先に帰るの?」とか,「上司が帰らないのに先に帰るのか?」というあの風潮です。
残業する必要ないのに無駄に時間を費やすことで,自分は会社のために努力していますとアピールすることは自己満足でしかなく,仕事の効率化を阻み,余計なコストを増やすだけです。
その自己満足を企業自体が推奨しているのですからねえ。
実は,こんな資料もあります。
『ジュリスト№1383』(法律専門雑誌)に掲載されたOECD Statの「年間総実労働時間とGDPの国際比較のデータ(2007年時点)は,労働時間が長ければ収益がアップするという幻想を否定する結果を示しています。
それは,長時間働けば働いた分だけ収益性がダウンするという結果でもあります。
【以下,OECD Statデータ】
要注目なのは,太字で示した日本・オランダ・韓国のデータ。
「雇用者の年間総労働時間数(C)」を比較してみると,オランダは日本よりも393時間も少ない。
それなのにもかかわらず「人口一人当たりのGDP(D)」は,日本よりも12上をいっている。
これが「労働時間1時間当たりのGDP(E)」でみるとその差は歴然。
韓国などはやたら労働時間を費やしているのにもかかわらず,比較対象国の中ではD・E共に最下位です。
時間をかければ生産性がアップするわけではないということが,このデータから明らかですね。
しかも,時間をかければコストは増大するので,その分を差し引くとさらに生産性が低下するという悪循環。
それにこき使えば,その分労働者のモチベーション(動機付け)やモラール(士気)は低下の一途をたどり,さらに生産性が低下するというスパイラル状態に陥るということに・・・。
日本がなかなか不況から脱することができないのは,このような悪循環が少なからず影響を与えているといっても良いでしょう。
今回はかなり長くなってしまいましたが,ここで最後に一言。
過ぎたるは猶及ばざるが如し(『論語』)
前回,最後にちらっと登場してきた言葉なので,ちょっとこれについて詳しく取り上げてみたいと思います。
「ワークライフバランス」とは,「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる」(ワークライフバランス憲章・2007年12月)ことを指しているわけですが,意外と知らない人多いんですよね。
【関連情報】
仕事と生活の調和推進(ワーク・ライフ・バランス)ホームページ(内閣府 仕事と生活の調和推進室)
内閣府が全国の20歳以上60歳未満の男女2500人を対象に実施した「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)と顧客ニーズに関する意識調査について」(2009年3月時点)というWeb調査の結を見ても,世間的に知っている人がかなり少ないことがわかります。
全体では,「ワークライフバランス」という言葉と意味する内容を共にわかっていると答えた人は13.4%しかおらず,まったく知らないと答えた人は半数以上の51.8%に上ります。
いわゆる大企業では,研修等で「ワークライフバランス」への周知をはかり,長時間労働を抑制するための措置をそれなりにとっているようです。それでも回答した大企業で就業している人たちのうち,理解しているのは3割強でしかありません。
それが中小企業になるとガクンと下がります。
500人未満の事業所では,回答者のおよそ半数がまったく知らないと答えています。
これは「ワークライフバランス」の概念自体を企業側が知らない,あるいは知っていても労働者に周知させる努力をしている企業が非常に少ないということを示しています。
それに,官公庁の職員でも「ワークライフバランス」を知っている人は少なく12.9%しかいません。
47.6%はまったく知らないと回答しています。
企業に指導する側の人間がこれではねえ。┐( ̄へ ̄)┌
うちの会社は余裕がないのに,労働者に余裕与えてどうなるんだと考える経営者も少なくないと思いますが,実はこの考え方が更なる余裕を奪っていくことにもなりかねない。
日本は明治維新以来,追いつき追い越せの精神でガムシャラにがんばってきた伝統があります。
ところが,何でもかんでもガムシャラにがんばればよいというものではなく,それがかえって自らを追い詰めて,行き詰まってしまうこともあります。
それに無駄な努力っていうものもあるんですよね。
特に日本の企業風土には,「無駄な努力」を推奨する傾向が強い。
良くあるのが,定時に帰宅することを阻む風潮。
「皆,まだ仕事しているのにあんただけ先に帰るの?」とか,「上司が帰らないのに先に帰るのか?」というあの風潮です。
残業する必要ないのに無駄に時間を費やすことで,自分は会社のために努力していますとアピールすることは自己満足でしかなく,仕事の効率化を阻み,余計なコストを増やすだけです。
その自己満足を企業自体が推奨しているのですからねえ。
実は,こんな資料もあります。
『ジュリスト№1383』(法律専門雑誌)に掲載されたOECD Statの「年間総実労働時間とGDPの国際比較のデータ(2007年時点)は,労働時間が長ければ収益がアップするという幻想を否定する結果を示しています。
それは,長時間働けば働いた分だけ収益性がダウンするという結果でもあります。
【以下,OECD Statデータ】
<凡例>
A=調査対象国
B=就業者の年間総実労働時間
C=雇用者の年間総実労働時間
D=人口一人当たりのGDP
E=労働時間1時間当たりのGDP
GDPは、米ドル換算でアメリカを100とした指数。
※印は常用雇用者5人以上の事業所の場合。<各国比較データ>
A B C D E
アメリカ 1,794 1,798 100 100
日本 1,785 1,808※ 74 71
オランダ 1,392 1,336 86 102
ドイツ 1,433 1,353 76 95
フランス 1,561 1,457 72 101
スウェーデン 1,562 ---- 80 82
デンマーク 1,574 1,541 79 88
スペイン 1,652 1,621 69 80
イギリス 1,670 1,655 78 85
イタリア 1,824 ---- 67 74
韓国 2,306 2,261※ 55 42
ただし、オランダの「雇用者」、デンマークの「就業者」および「雇用者」、韓国の「就業者」の年間総実労働時間は2006年のもの。
要注目なのは,太字で示した日本・オランダ・韓国のデータ。
「雇用者の年間総労働時間数(C)」を比較してみると,オランダは日本よりも393時間も少ない。
それなのにもかかわらず「人口一人当たりのGDP(D)」は,日本よりも12上をいっている。
これが「労働時間1時間当たりのGDP(E)」でみるとその差は歴然。
韓国などはやたら労働時間を費やしているのにもかかわらず,比較対象国の中ではD・E共に最下位です。
時間をかければ生産性がアップするわけではないということが,このデータから明らかですね。
しかも,時間をかければコストは増大するので,その分を差し引くとさらに生産性が低下するという悪循環。
それにこき使えば,その分労働者のモチベーション(動機付け)やモラール(士気)は低下の一途をたどり,さらに生産性が低下するというスパイラル状態に陥るということに・・・。
日本がなかなか不況から脱することができないのは,このような悪循環が少なからず影響を与えているといっても良いでしょう。
今回はかなり長くなってしまいましたが,ここで最後に一言。
過ぎたるは猶及ばざるが如し(『論語』)
by mmwsp03f
| 2010-06-30 17:48
| 労働問題