歴史的事実に対する誤解と思い込み
2010年 05月 30日
5月29日に更新した「歴史の隙間」では,ボリシェヴィキ革命後のロシア情勢に対する連合国の干渉政策について取り上げました。
この対ソ干渉戦争(シベリア出兵)の連合国側の意図として,一般に広まっている考え方に「共産主義革命の影響が自国へ及ぶことを恐れて,ボリシェヴィキ政権を打倒しようとした」というものがあります。
これは,歴史教科書にも記載されている考え方なのですが,当時の連合国首脳はそれを第一だとは考えていなかったことが,細谷千博氏の『シベリア出兵の史的研究』(岩波文庫)や原暉之氏の『シベリア出兵:革命と干渉、1917-1922』(筑摩書房・絶版)などに記されているように様々な研究によって明らかにされています。
以前取り上げたケレンスキー女装説のように,なぜかソ連側の主張がそのまま受け入れられてしまっている節が見受けられます。
なぜ,そのような誤解が一般に広まっているのでしょうか?
その大きな原因として考えられるのは,マルクス主義(マルクス=レーニン主義)は資本主義打倒を目標に掲げているので,資本主義陣営の国々がボリシェヴィキ革命を早めにつぶしておこうと考えても不思議はないという,論理的に考えれば妥当に思われる予想(もしくは印象)を抱いたからでしょう。
論理的に考えて妥当であっても,それが事実であるとは限りません。
たしかにそのように考える人は少なからずいたでしょうが,連合国の首脳は革命の波及を阻止することを前提として考えていなかったことは,「歴史の隙間」をご覧いただければわかると思います。
このような思い込みは往々にして見られるものです。
例えば,私が以前学習塾で高校世界史を教えていたときのことですが,ある高校生が受講生の質問に答える現役大学生のあるチューターに,
「無産市民って,なんですか?」
と聞いていた時のこと,そのチューターは
「働いていない人のこと。つまり,プータローってことだね」
てなことを言っていました。
えっ!!Σ( ̄□ ̄|||
これはものすごい思い込みです。
そのチューターは,「無産」→「産み出さない」→「働いていない」という連想から「プータロー」のようなものと考え,確かめもせずに答えてしまったようです。
正解は「財産を持たない(財産が無い)市民」のことを「無産市民」といいます。
古代ギリシアや古代ローマにおける参政権拡大の話では,必ず出てくる「無産市民」ですが,意外と「無職の市民」と理解していた人って多いのではないでしょうか。
だけど,古代ギリシアでは労働は奴隷がするもので,富裕階級であっても一般階級であっても市民は通常働かなかったという事実を知っていれば,少なくとも「無職の市民」とか「働いていない市民」というふうには,考えなかったのではないかと思います。
ひょっとしたら,学校の先生がそこのところをしっかり教えていなかったからかもしれません。
やはり,歴史については事実関係を確認することが肝心ですね。
ちなみに,これと似たような事例に「ことわざ」の誤解があります。
皆さんよくご存知の「情けは人のためならず」ですが,相変わらず「情けをかけると,その人のためにならない」という意味に誤解している人が多いようです。
実際に30歳以上の人に聞いてみたら,このような誤解をしている人がいました。
これは「情けは他人(ひと)のためではなく,自分のためである」「他人に情けをかけることで,後になってから自分に返ってくる」という意味ですから・・・。
意味をあやふやに覚えていたときは,とにかく調べましょう。
この対ソ干渉戦争(シベリア出兵)の連合国側の意図として,一般に広まっている考え方に「共産主義革命の影響が自国へ及ぶことを恐れて,ボリシェヴィキ政権を打倒しようとした」というものがあります。
これは,歴史教科書にも記載されている考え方なのですが,当時の連合国首脳はそれを第一だとは考えていなかったことが,細谷千博氏の『シベリア出兵の史的研究』(岩波文庫)や原暉之氏の『シベリア出兵:革命と干渉、1917-1922』(筑摩書房・絶版)などに記されているように様々な研究によって明らかにされています。
以前取り上げたケレンスキー女装説のように,なぜかソ連側の主張がそのまま受け入れられてしまっている節が見受けられます。
なぜ,そのような誤解が一般に広まっているのでしょうか?
その大きな原因として考えられるのは,マルクス主義(マルクス=レーニン主義)は資本主義打倒を目標に掲げているので,資本主義陣営の国々がボリシェヴィキ革命を早めにつぶしておこうと考えても不思議はないという,論理的に考えれば妥当に思われる予想(もしくは印象)を抱いたからでしょう。
論理的に考えて妥当であっても,それが事実であるとは限りません。
たしかにそのように考える人は少なからずいたでしょうが,連合国の首脳は革命の波及を阻止することを前提として考えていなかったことは,「歴史の隙間」をご覧いただければわかると思います。
このような思い込みは往々にして見られるものです。
例えば,私が以前学習塾で高校世界史を教えていたときのことですが,ある高校生が受講生の質問に答える現役大学生のあるチューターに,
「無産市民って,なんですか?」
と聞いていた時のこと,そのチューターは
「働いていない人のこと。つまり,プータローってことだね」
てなことを言っていました。
えっ!!Σ( ̄□ ̄|||
これはものすごい思い込みです。
そのチューターは,「無産」→「産み出さない」→「働いていない」という連想から「プータロー」のようなものと考え,確かめもせずに答えてしまったようです。
正解は「財産を持たない(財産が無い)市民」のことを「無産市民」といいます。
古代ギリシアや古代ローマにおける参政権拡大の話では,必ず出てくる「無産市民」ですが,意外と「無職の市民」と理解していた人って多いのではないでしょうか。
だけど,古代ギリシアでは労働は奴隷がするもので,富裕階級であっても一般階級であっても市民は通常働かなかったという事実を知っていれば,少なくとも「無職の市民」とか「働いていない市民」というふうには,考えなかったのではないかと思います。
ひょっとしたら,学校の先生がそこのところをしっかり教えていなかったからかもしれません。
やはり,歴史については事実関係を確認することが肝心ですね。
ちなみに,これと似たような事例に「ことわざ」の誤解があります。
皆さんよくご存知の「情けは人のためならず」ですが,相変わらず「情けをかけると,その人のためにならない」という意味に誤解している人が多いようです。
実際に30歳以上の人に聞いてみたら,このような誤解をしている人がいました。
これは「情けは他人(ひと)のためではなく,自分のためである」「他人に情けをかけることで,後になってから自分に返ってくる」という意味ですから・・・。
意味をあやふやに覚えていたときは,とにかく調べましょう。
by mmwsp03f
| 2010-05-30 10:06
| HP(歴史)