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まあ思いついたことをつらつらと書き綴っています(写真は奥多摩から見た富士山)。


by M.M@Kanagawa
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イラク戦争開戦をめぐる陰謀

先日,ワーナーマイカルシネマズにて,マット・デイモン主演の映画「グリーン・ゾーン」を見てきました。

グリーン・ゾーン公式サイト

サミュエル・ジョンソン賞を受賞したラジブ・チャンドラセカランのノンフィクション作品『グリーン・ゾーンの内幕(Inside Iraq's Green Zone)』を原作とした映画で,イラク戦争の開戦にまつわる内幕を明らかにし,アメリカのイラク統治の問題点を指摘したものです。

原作本はこちら。

グリーン・ゾーン

ラジブ・チャンドラセカラン / 集英社インターナショナル


映画は,戦争の開戦理由となった大量破壊兵器の所在を捜索しているロイ・ミラー上級准尉が,国防総省からもたらされる誤情報に疑問を持つところから始まります。

イラク軍の大量破壊兵器隠匿場所の確報として受け取る情報がことごとく間違っていて,それをブリーフィングの際に指摘しても相手にされず,余計な詮索はするなというように質問を打ち切られる始末…。

開戦の理由ともなった重大な問題であるのにも関わらず,いつまでたっても発見できないことに裏があると感じたミラー准尉が独自捜査を続けていく中で,真相に近づいていくというものです。

あとは見てのお楽しみということで…。

スリリングで面白い映画なのですが,この映画を見るにはある程度イラク戦争に関する予備知識があったほうがよいだろうと思います。
そこでお勧めなのが,

戦争詐欺師

菅原 出 / 講談社


という本です。

これは,ブッシュ政権の開戦決定をめぐる陰謀を明らかにした本で,当時の状況が非常にわかりやすく解説されています。
この本のタイトルとなっている「戦争詐欺師」ですが,これは主にアメリカを開戦へと引きずり込んだアフマド・チャラビという人物のことを指しています。
ただし,読んでいかれるとわかりますが,「戦争詐欺師」は彼だけを指し示す表現ではなく,アメリカをいやでも戦争へ引き込もうと様々な陰謀をめぐらす人びとを総称しています。

イラク戦争開戦を強硬に主張した国防総省が,不確実な情報でもフセインを叩き潰すためなら事実と言い張ってごり押しをする。
あきれるほどに杜撰な調査とイラク攻撃に都合の良い情報だけを取捨選択し,戦争を強行した結果,現在も続く泥沼のテロ戦争が続くという最悪の状況をもたらしたことが,この本では示されています。

まさしく,デイヴィッド・ハルバースタムの『ベスト・アンド・ブライテスト』によって明らかにされた,ヴェトナム戦争が泥沼へ至る決定過程の再来です。

ベスト&ブライテスト〈上〉栄光と興奮に憑かれて (朝日文庫)

デイヴィッド ハルバースタム / 朝日新聞社


アメリカの脅威は排除しなければならないという強迫観念が,アメリカという国を必要のない戦争へと駆り立て,結果として国益を損なう重大な失敗を犯す。

「グリーン・ゾーン」を見て,このようなことを繰り返さないためにも,われわれは国際情勢にも絶えず目を向け,真実を追究しなければならないと改めて感じました。
by mmwsp03f | 2010-05-26 20:43 | 映画・娯楽