まあ思いついたことをつらつらと書き綴っています(写真は奥多摩から見た富士山)。


by M.M@Kanagawa
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カテゴリ:労働問題( 17 )

誤解される労働契約

使用者・労働者ともに、自分たちに直接かかわる非常に重要なことであるのにもかかわらず、労働契約というものを十分理解しているとはいえないのが現状です。

それを端的にあらわしているのが下の記事。

【関連情報】
日本の雇用契約書は薄すぎる 「20頁あっていい」という主張(J-castニュース)

タイトルからして労働契約(雇用契約)がどのようなものか、というよりも一般的な「契約」というものの概念がわかっていないのがありありとわかります。

契約書というものはページ数が多ければいいというものではありません。
社会通念上、合意されている事項については特段契約書に明記する必要はなく省略されていることがほとんどです。

上記記事にある入社2年目の社員の言い分に全く妥当性がないということは、社会通念上明白なのですが、そのことで契約書に記載されている事項が少なく薄っぺらいのも問題だという見解を示す社長もいかがなものかと思います。

もし、記事中のA社長の言うように入社2年目のC君のような社員に対応するために、仕事の心得などを逐一契約書に盛り込んでいたら20頁どころの話ではすみません。
A社長の言うような事項を記載するとなれば、そのうち「人に迷惑をかけてはいけません」というような道徳的なことまで盛り込まなくてはならなくなり、ページは無尽蔵に増え続けていくことになります。

ちなみに、一般の契約書のページ数が増えて分厚くなるのには理由があります。
それは、商品やサービスを提供する側が免責事項を事細かに記載しているからです。
つまり、責任回避のための言い訳をくどくどと並べ立てるから、契約書はえてして分厚くなるのです。

それに労働契約というものは契約書によって完結するものではなく、社内規範である就業規則等も労働契約の範疇に含まれるのです。

労働契約書には、必ず就業規則を遵守することが明記されているはずですので「僕は雇用契約書にサインはしましたが、それ以外のものは知りません」などという言い分は通用しません。
労働契約書にサインをしたということは、就業規則に従いますということに合意しているわけですから、このような逃げによって「誠実に職務を遂行する」ことを拒否できません。

当然のことながら、合理的手続きによって作成された就業規則への不服従は懲戒処分の対象となります。

さらにA社長は「就業規則は入社してからじゃないと見られないし、入社したって見せない会社だってある」と言っていますが、こういう認識の社長では相談するだけ無駄です。

就業規則は、労働契約法7条にあるように労働者に周知して初めて労働条件として認められるわけで、就業規則を周知させることは使用者の義務となっているのです。
したがって就業規則を見せない会社は、就業規則の規定を労働条件とすることが出来ないのです。

それから「入社してからじゃないと見られない」というのも誤り。
入社前に就業規則を見せることになんら規制はありませんし、労働契約にかかわることですから契約時には積極的に見せなければならないものです。

それを怠っておきながら、契約書に何でも書かなきゃならないというのは筋が通りません。

少なくとも労働者を雇用する立場の人物が、労働契約について無知すぎるというのはいかがなものでしょうか?

C君も非常識ですが、A社長もかなりな非常識です。

どうも契約書は責任回避のための道具と考えられがちですが、契約というものは本来約束事なわけですから、そこのところ履き違えてはいけません。

まずは、C君もA社長も契約は約束を守るために締結するものという基本中の基本のさらに基本を学ぶべきと考える次第です。
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by mmwsp03f | 2011-03-05 09:49 | 労働問題

頓挫した雇用促進策

今期の民主党による事業仕分け(第3期)において,事業廃止の方針が打ち出されたものに「ジョブ・カード制度」があります。
この制度について,一般の方で知っている人はあまりいないと思いますが,これは2年前から実施されていたのですが,この制度運用による雇用実績があまりあがっていないため,制度見直しではなく廃止の評定を受けてしまうことになりました。

【ジョブ・カード廃止関連のニュース】
事業仕分け:第3弾 「労働特会」5事業廃止 ジョブカードなど(毎日.jp)
特会仕分け、雇用事業の大半廃止 行政刷新会議(政治 - エキサイトニュース)
5事業「廃止」、5事業「事業の見直し」(TBS・News i)
事業仕分け第3弾前半戦 ジョブ・カード事業廃止など制度自体のあり方見直す判定相次ぐ(FNN・フジニュースネットワーク)
事業仕分け ジョブカード廃止でキャリア形成促進助成金は廃止?/成澤紀美コラム(マイベストプロ東京・読売新聞東京本社広告局)

このジョブ・カード制度は,主に正社員としての職務経験が少ない若年者を対象にした就職支援制度で,履歴書と職務経歴書をミックスしたジョブ・カードというツールを活用することで就職活動やキャリア支援に役立てようというものです。
いちおう「若年者」が主たる対象ですが,実際にジョブ・カード制度利用者の中には中・高年者もかなりおります。
厚生労働省の定義によると「過去5年間において、おおむね3年以上継続して正社員として働いたことがある方以外の方」を対象とする制度ということです。

わかりづらい表現ですが,「過去5年間にだいたい3年以上継続して正社員ではなかった人」を対象に運用されている制度だということ。
つまり,フリーターやパートタイマー,派遣社員などの非正規雇用者または就業経験のない人が正社員として働けるようにしましょうというのが趣旨です。

このジョブ・カード制度は,単にジョブ・カードというツールを就職に役立てようというだけではなく,就業に必要なスキルを職業訓練を通じて習得させ,それをハローワークや職業訓練校などのコンサルタント(有資格者)が承認し,訓練受講者の就職をバックアップしようという狙いがあります。

特にこの制度のウリとなっていたのが,企業での実習を実施し,企業の現場担当者が訓練受講者の仕事ぶりを評価するというところです。
職業訓練校の教官ではなく,就業現場の担当者が評価するということで,その評価はかなり信頼度が増し,実際の就業に役立つスキルの証明になると期待されていました。
また,この企業実習を通じて,実習先での就業実績から訓練受講生を雇用しようという企業が現れることも期待されていました(実際に,雇用にまで至った例がいくつもあります)。

【ジョブ・カード制度関連情報】
「ジョブ・カード制度」のご案内(厚生労働省)
政策レポート:ジョブ・カード制度(厚生労働省)
ジョブ・カード事業(日本商工会議所)

求職者と企業とのマッチングも意図して実施されていたジョブ・カード制度ですが,それほど普及しておりません。
日本商工会議所や各地域の商工会議所,一部の企業においてPRが行われていましたが,あまり効果を挙げていません。

実は私,この仕事の関係でジョブ・カード制度に一時期関わった事があります。
その際の経験から申し上げると,ジョブ・カード制度自体はそれほど悪い発想ではなかったと思います。
特に,企業実習を通じて求職者と企業とのマッチングを図るというのは,企業にとっては必要な人財を見極めることができ,一方の求職者は自分が希望する企業なのかを判断することができる,互いにとってそれなりにメリットはあるという印象を受けました。
ただし,1回だけなんでマッチングに失敗すると後はありませんけど,チャンスを生かすも殺すも当事者次第なんで,そこはあえて詳しく申し上げませんが…。

運用上,いろいろと問題があると指摘を受けることは多々ありましたが,ジョブ・カード制度自体を否定する意見というのは,これまであまり聞いたことがありませんでした。

しかし,雇用促進に大して貢献していない(実績が上がっていない)ということで行政刷新会議で「廃止」判定がされていましたが,ではなぜ雇用促進に貢献できなかったのか。

まず第一に,予算の問題。
この制度って,かなり金がかかるんですよね。

この「職業能力形成プログラム」受講者に対する職業訓練は無料ですし,生活維持のために補助金も支給します。
さらに,実習先企業に対しても受入れた受講者1人当たりにかかる費用分は助成金が支給されることになっています。

当然,予算は無尽蔵にあるわけではありませんから,すべての求職者に対してジョブ・カード制度を適用できませんし,受講者数を抑制しなければなりません。
したがって,雇用促進に劇的な効果を挙げることが本来難しい制度なのです。

そして第二に,企業の非協力。
この制度は企業実習がウリなのにもかかわらず,受け入れようという企業が非常に少ないということ。
手続上,かなり面倒くさい(助成金払うんだからある程度しかたないのですが)ので,二の足を踏む企業も多いようです。

しかし,それだけではないのですよね。
実際のところ,助成金が少ないから断るとか,職業訓練なんてうちとは関係ないとかいう,自分たちのことだけしか考えていない企業というのは非常に多い。

この職業訓練は,単に失業率を抑制することを目的としているだけではなく,求職者のスキルをアップすることによって,就業者全体の技能の底上げを図ることも意図されているわけです。
つまり,日本の労働者全体の質的向上を目的としているのですが,そんなことは関係ないといわんばかりに協力を惜しむ企業が圧倒的多数なのです。

経団連などは,早いとこ景気を何とかしろというような発言をして,政府に対して効果的な景気復興策を要求しますが,彼らは政府に圧力をかけるばかりで,自ら有効な行動指針を表明し,具体的に行動することは非常にまれです。
ただ,クレクレいうばかりの他力本願で景気がよくなりゃ苦労はしません。

経済が上向くか否かは企業の努力次第なのですが,どうしたら景気が上向きになるかを考え,実践していない企業が,自分たちは協力しないくせに政府に要求ばかり突きつけるというのはいかがなもののでしょうか?

商品やサービスを消費しているのは一体誰なのかを,このような企業人たちは考えたことがあるのでしょうか?
雇用促進に協力するということは,失業率の低下を促し全体経済の活性化につながる有効な施策のはずです。
ところが自らの果すべき役割を自覚せずに,要求ばかりが多いのは非常に問題です。

ジョブ・カード制度の普及・周知に努力されている企業・団体がある一方で,このような非協力的な企業・団体が非常に多いというのは嘆かわしいことといわざるを得ません。

他にも,考えられることは多々あると思いますが,長くなってしまいましたのでこの辺で…。

事業として効果の挙げられなかったものを「廃止」と判断するのは,ある程度しかたがないことだとは思いますが,今回の事業仕分けがこのような背景をきっちりおさえた上での判断なのかは,多少疑問が残るところではあります。

いずれにせよ,「無駄の温床」として国家財政のブラックボックスと見なされている特別会計予算ですから,かなり厳しい目で見られるのはいたし方ないとはいえ,「職業情報総合データベース運用事業」などのくだらない事業といっしょくたに捉えられているのは,あまり納得はできないかなとは思います。
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by mmwsp03f | 2010-10-28 12:24 | 労働問題

言うべきときには言う

10月1日より,大手人材会社が就活サイトをオープンするのを契機に,企業の採用活動が本格化します。

【主要な就活サイト】
学生のための就職情報サイト・リクナビ2011(リクルート)
[en]学生の就職情報2011(エンジャパン)
日経就職Navi2011(日経ヒューマンリソース)
学生のための就職情報サイト・マイナビ2011(毎日コミュニケーションズ)

(注)主要各社の就活サイトでの企業情報・採用情報は,会員登録をしないと閲覧できません。


それまでは水面下で進められていた学生の就職活動が,大手を振ってできるようになったわけです。
学生の皆さんは,これから会社説明会,適性試験,面接とさらに忙しくなるわけですが,このような就活を通じてさまざまな経験をされることと思います。
そして,理不尽なことも数多く経験されることと思います。

私も就活を通じて理不尽な経験をしたことが数多くあります。

大学の就職指導課に来ていた求人の一つに,小さな資格関連書籍を出版している会社があったので,そこを応募した際の話。
事前にアポイントをとって指定された時間に先方を訪問したのですが,担当者が不在であるとのことで待たされることになりました。
10分前には会社について,そのまま約束の時間になったら現れるのだろうと思って待っていたのですが,ぜんぜん現れる気配がない。
結局,それから30分待ちましたが一向に現れず,その間何の連絡もなし。

正直,約束の時間に担当者から伝言も連絡もないという時点で面接を受ける気が失せていました(当然,入社希望を持つまでもありません)。

帰宅後に担当者から電話があり,形式的な謝罪の言葉の後に再度面接の申し入れがあったのですが私はそれを断りました。
その際に,このようなことを言われました。

「まあ,うちの会社のような小さな会社はあまり関心ないのかもしれないけども・・・」

別に私は有名か無名か,大きい小さいなどにこだわって就職活動をしていたわけではなかったので,よっぽど先方の非常識を指摘してやろうかと思いましたが,同じ大学の他の人たちの就活に不利になるかもしれないと余計なことを考え,言いたいことを抑えてしまいました。

これは今になって考えてみると,例え相手が激怒したところで主張の正当性はこちらにあるわけですし,本当に余計な配慮だったと反省しております。
自ら指定した時間に現れないどころか,伝言もなく相手を待たせても平気でいる会社には,よほど執着がない限り二度と受けようという気にならないということを指摘してあげたほうが,その担当者のためだったと思います。

日本人の多くは,就職に不利になるとか,自分の相手に与えるイメージが悪くなるとか,いろいろと余計なことを考えて,言いたいこと,言うべきことを抑えてしまう傾向があります。
特に,ここに就職したいと考えている会社であれば,その一言が不採用に結びつくことを恐れて理不尽な扱いを受けても口をつぐんでしまいます。

別の場面で,このようなことがありました。
とあるシンクタンク兼経営教育研究機関の面接に行った時のこと。

私は大学で学生オケに参加していたのですが,そのことが面接で話題になった際,
「どうせ下手なんだろ」
という発言が面接担当者の口から飛び出してきました。

それまでにも圧迫面接と思しき受け答えがあったのですが,さすがにこの発言は聞き捨てならないと思いました。
自分で聴いたわけでもなく,単なる憶測で相手を傷つける発言を平気でする悪意を感じたわけです。
しかし,その時も「ええ」「まあ」というようなあいまいな発言でお茶を濁してしまい,非常に後悔することになりました。

相手が自分より下であるという意識から発せられる無神経な発言。
しかし,相手に非があったとしても不採用を恐れてつぐんでしまう口・・・・・・。

やはり採用面接の場面でも「言うべきことは言う」というスタンスは必要だと思います。
口をつぐんだところで,結果が不採用であれば同じことです。
それよりも,相手の不適切な発言を明らかにし,その思うところをはっきりと伝えた方が精神衛生上は良いのではないかと思ったりしています。

まあ,自己満足であると思われる方もいらっしゃるとは思いますが,やはり相手の非はキッチリ自覚していただく必要があります。
もし採用されたとしても,そのような人間のいる職場で働かなくてはならなくなるわけですから,ガマンすればするほどストレスは溜り,精神的にまいってしまうことになります。
それに,そういう人間は社内の人間関係を壊乱し,果ては顧客との関係を悪化させる元です。

我々の側が理不尽なクレームをつけるのは問題ですが,企業側からの理不尽な対応には毅然と立ち向かう必要があると,私は考えています。

企業にとって就活生はあくまでお客様です。
どのような理屈をつけようが,これは厳然とした事実です。
客を客として扱わない企業には,それを知らしめることも必要です。

現在,リクナビが「7つの約束」を提起して,これからの就職環境の改善のため努力することを表明していますが,このように人材紹介会社や企業側が悪しき就職慣例を改善してくれるのを待つだけではなく,就活生自らが改革のために行動することが必要だと思います。

結局,就活生が状況を甘んじて受け入れてれば,旧態依然とした就職慣例は改善されないままです。
今このとき,就職活動の当事者である人たちが,現状打開のために行動することが肝心です。

改革への小さな一歩ですが,「言うべきときに言う」(就活生が自らの意思を表明する)ということは重要な一歩でもあります。
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by mmwsp03f | 2010-10-06 10:32 | 労働問題
脳科学者の茂木健一郎さんが8月25日にツィッター上で行った提案を受けて,本日(9月28日)にリクルート社が,下記のようなツィートを公表しました。
@kenichiromogi はじめましてリクナビ編集部です。新卒採用に携わるスタンスを「7つの約束」としてまとめました。茂木先生が8/25に発信された「リクルートの方々へ」の返答になるかと思いご報告させて頂きます。http://bit.ly/9jWKFN #7yakusoku

上記の「7つの約束」の内容は以下の通り。
【7つの約束】(リクナビ)→トップページ

約束1 入社後の活躍を期待できる出会いを創造します。
約束2 若い人たちが働く機会の拡大、ミスマッチの解消に努めます。
約束3 学業と両立できる就職活動を実現します。
約束4 就職活動にかかる学生の負担を軽減します。
約束5 将来を考える学生に、オープンな機会を提供します。
約束6 産業界が求める人材像を明らかにし、学生、大学に発信します。
約束7 国を越えた就職・採用活動を促進します。

「トップページ」からさらにいくつもリンクが分かれていて,階層もちょっと深いので一通り閲覧するのは一苦労。
なので,全部を見ているわけではありませんがちょっと拝見したところ,これまでの取り組みとどこが違うかわからないところや,具体的な施策・ビジョンが明らかではないものなどがあって,「とにかく考えてみました感」が濃厚な内容ですが,それでも外部の提案を受けて改革への一歩に向けて踏み出しているというのは高く評価できるのではないかと思います。

実はリクルート社への提言の前に,茂木さんはかなり激烈な新卒採用批判を行っていたりします。
その内容については,下記をごらんあれ。

【茂木健一郎 クオリア日記】
連続ツイート 判断(2010/09/10)

茂木さんはこのツィートにおいて,企業の人事担当者が応募者の本質を見極めようとせずに「新卒か既卒か、年齢は何歳か、出身大学はどこかといった定型的、外形的な基準」に頼って採否を判断していることを強く批判しています。

それ以前にも,新卒一括採用の理不尽さに対する怒りのツィートなどもあったりして,かなりこの問題については腹を立てておられる模様。

現に,私がこのブログでも指摘してきましたが,人事担当者は「有能な人材」がほしいと口をそろえて言いますが,その「有能な人材」が何なのかは解っておらず,WebテストやらSPIの成績がよければ「優秀・有能」という杓子定規な基準で判断しているという安易さが見られます。

第一,SPIとかWebテストとかは事務処理の正確さとか単純作業の早さとかそんなことは解っても,クリエイティブな仕事や高度な判断を要求されるような仕事に向いているかどうかなんていうのは,はっきりいってわかりません。
それでも,十把ひとからげに同じことをやらせ,面接でも皆に同じ質問と受け答えを要求し,それで「個性的な人材」などというわけです。

こういったところが,「自らの『判断』を行う能力も、意志も持たない」と茂木さんが批判される所以でしょう。

リクルート社が,これまでの就職慣例を改革すると明言したことは大きな一歩だと思います。
ただし,「7つの約束」という声明はまだまだ改善の余地があり,今後広くさまざまな人々の意見を取り入れながらブラッシュアップしていくことになるだろうと思います。

それよりも問題なのは採用する企業側であり,企業側の意識改革を如何に進めていくかにかかっています。

未だに多くの企業では,自らの行動が全体社会にどのような影響を与えるかということを俯瞰できない経営者,人事担当者が意思決定を行っています。
彼らを退陣させるか,意識改革を実現しなければ,現在の経済状況は好転しないものと私は考えます。

ミクロな視点からだけでは自社が置かれている状況は見えてきません。
目先の損益ばかりにとらわれずにマクロな視点を持つことが,企業経営者,人事担当者に求められているものだということを自覚させられるかが最大のポイントだと思います。

リクルート社を筆頭とする人材ビジネス業界が,どれだけ企業の意識改革に成功することができるか,今後の取り組みに要注目です。

【関連情報】
7つの約束 on Twitter(リクナビ)
「就活時期」をもっと遅く! 大手商社の動き広がるか(J-castニュース:2010/9/23 09:00)
高祖先生、学術会議提言の意味を説く(EU労働法政策雑記帳)




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by mmwsp03f | 2010-09-28 12:31 | 労働問題

採用選考の悪弊

就職活動をしていく中で,多数の企業の応募したことある方であれば一度は経験したことがあるだろう圧迫面接。

圧迫面接ってイヤですよね。

現在は行われているかどうかはわかりませんが,過去に全否定面接というものを実施していた企業があったそうです。
私自身は,さすがに全否定面接というものを経験したことはないのですが,以前勤めていた会社の同僚から,旅行会社(旅行代理店)の中には全否定面接を行っていたところがあるということを聞いたことがあります。

全否定面接とは,応募者の回答に対して面接担当者がことごとく否定的な返答を繰り返すというもの。
よくあるのが,志望動機を聞いたあとに行われるこのようなやり取り。

応募者:御社の○○に惹かれまして,応募させていただきました。
面接担当:本当に,それが志望動機なの?
応募者:はい。私は△△の部署で実施しているプロジェクトに関心を持って,自分もその一員に加わりたいと考えております。
面接担当:まー,うちは,希望する部署に配属することはまずないと思うけど,それでもいいの?
応募者:それでも,希望の部署で働けるように他部署でがんばっていきたいと思います。
面接担当:ずいぶんな模範解答だけど,ほんとうにそんなこと思っているの?
応募者:はい。
面接担当:ふーん。だけど希望しない部署でがんばっていたら,その部署が手放したくないって希望する部署にいけない可能性もあるけど,それでもいいの?
応募者:それは……。それでも御社で認められるようにがんばりたいと……。
面接担当:さっきから,がんばりたい,がんばりたいって言ってるけど,がんばるだけじゃあ業績上がらないんだよね。
あなたはどうがんばって,うちの会社に貢献してくれるっていうの?
・・・・・・

とまあ,こんな感じ。
これでも,まだいいほう。
過去には応募者の人格を否定するような面接も行われていました。

さて話は戻りますが,その同僚は旅行業務取扱主任者(現在の旅行業務取扱管理者)の資格試験の指導を行っていたのですが,それと同時に旅行業界への就職指導もあわせて行っていました。
この就職指導の際に,実際にそのような場面に遭遇した場合に耐性をつけていたほうがよいということから,全否定面接対策というものもやっていたとのことです。

旅行業界は就職先として人気が高いのですが,いかんせん客からのクレームも多い業界であります。
そこで,クレームに対応することができる人物であるかどうかを見定めるために,このような面接方法を採っているらしいですね。

しかしこの圧迫面接,本当に応募者の適性や能力を図ることができる面接手法なのでしょうか?

結論から申し上げれば否。
ぜんぜんだめだめです。

応募者が神経図太いかどうかはわかっても,その人の仕事に対する姿勢や能力を測ることはできません。
なぜなら,圧迫面接はネガティブな受け答えをすることによって相手を追い詰めるだけであって,その人の仕事への姿勢を掘り下げて見ていくことができません。
また,応募者は自分の回答が否定されることによって,それから先に話を発展させることができなくなり,沈黙してしまうことになります。
手詰まり状態に追い詰められて,どうやって自己PRができるのでしょうか?

つまり圧迫面接は,面接担当者が相手を見極める術を自ら奪っていくという面接手法なのです。
そして,まったく非合理的であるだけでなく本来の目的自体を達成できない面接手法なのです。


だいたい,相手が答えに詰まってしまったらその時点で終わりです。
面接というものは,相手に自分をアピールする機会を与え,そこから人物を見極める材料を得ることを目的としています。
ところが,相手を答えられなくすることで,見極める材料が手に入ることがなくなってしまい,面接本来の目的である相手を知る機会を自ら奪い続けていくことになるのです。

面接相手とのやり取りの中で,相手の主張の欠点をツッコんで否定的な返答になってしまう分にはしょうがないことです。
この場合は,相手を追い込むことを前提としている圧迫面接とはまったく違います。
その点は誤解のないように。

いずれにせよ,未だに圧迫面接をスタンダードな面接手法として取り入れているような企業は,自社が求める人財をみすみす逃す愚を犯しているだけではなく,対応の悪い企業として自社の評価を失墜させ,客からも見放されるという何重もの愚を犯すことになっているのです。
結局は,自社のモラルの欠如(モラルハザード)を露呈する,いわば恥さらしになっているのだということを自覚すべきです。

それでも続けるというのであればご自由に。
結局,そのような企業には有能な人財は集まってきませんし,いたとしてもすぐリタイヤしていくでしょうから。

最後に,この記事をご覧になっている方で就職活動を行っている方へ。

もし圧迫面接の場面に遭遇してしまった場合,まずは落ち着いて相手の言い分をよく聞いてください。
大抵の圧迫面接は,応募者の発言に対する否定的な返しをしてきます。
この否定的な返しは,なにも確証があっていっているわけではありません。
ですから,自分の発言に自信があるのだったら,逆にそれを否定する根拠を求めるべきです。

意外な返しに面接担当者が答えに詰まるようであれば,それはそれで痛快ではないでしょうか?
不採用になるかもしれないからと恐れる必要はありません。
理不尽な圧迫面接を行う場合は,最初から採用するつもりはありません。

ただし,感情的なやり取りにならないようにご注意を!

自社の発展・向上を真剣に考え,そのために必要となる有能な人財を見つけたいという企業は,圧迫面接のような愚かな手法はとりません。
エキサイトニュースに掲載されているように,「圧迫面接に屈することなく、会社を見極めるよいポイントと前向きに判断してはいかがでしょうか」。

理不尽な対応には,大人な対応が意外と相手に対するダメージが大きいものです。

エキサイトニュースの記事にあるように,「これは面接ではありませんので、退席します。書類をこの場で返却してください」と要求して,実際にその場を退出するぐらいのことは,充分許される対応です。

その際には,相手からの悪口雑言には耳を貸さず,感情的な応酬にならないようにご注意を!

【関連情報】
圧迫面接…怖くて答えに詰まります(エキサイトニュース)
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by mmwsp03f | 2010-09-13 10:50 | 労働問題

根拠のない就職常識

リクナビやリクナビNEXTは,就職・転職希望者向けの情報サイトとして利用されている方も多いと思いますが,こういう転職情報サイトというのは,同じようなテーマの特集を何度も何度も取り上げては,「転職を希望する皆さん気をつけましょう」というように,転職の慣例・常識を伝授しています。

【関連情報】
リクナビNEXT(リクルート株式会社)

何度も同じ特集を掲載するというのは,同じような間違いをしてしまって転職に失敗してしまう人が多いということを示しているわけですが,実はそれだけではありません。
就職・転職活動の慣例・常識を浸透させるという意図もあったりします。
つまり,就職の常識・慣例の啓蒙です。

これはいうなれば,採用する側の都合に就職・転職希望者を合わせようという意図で行われているものです。
実際に就職・転職サイトを利用した人であればよくお分かりだと思いますが,すべて企業サイドの目線からアドバイスされています。

まあ,採用する側の意向が就職サイトに反映されるのはある程度仕方がないことではありますが,皆一様に同じようなことをせよと言っているのにもかかわらず,企業は「個性的な人材」を求めているといわれても正直説得力がありません。

それにもかかわらず,結局は個性的ではない就職情報メディアのアドバイスにしたがう就職の常識や慣例にならうマニュアル化された就職活動を行うようになります。

何故そうなるのか?

就職・転職活動をしている皆さんにはよくお分かりだと思いますが,それが最も無難だからです。

無難だから就職の常識・慣例に倣うというのは,何も就職・転職希望者だけに限りません。
実は,採用する側もそのような考え方で採用活動を行っていたりします。
それを如実に示しているのが,判を押したように毎年繰り返されるSPIなどを利用した筆記試験。

だいたい,その人の仕事への取り組み方とか,仕事の出来の良し悪しが筆記試験でわかるわけがないのですが,たくさんの応募者を短期間でふるいにかけなければならないという手間の問題と,とりあえず多くの企業が採用しているからという日本的な馴れ合いの論理から,とりあえず筆記試験をやれば,優秀・有能な人材を絞り込めるという思い込んでいるように思えます。

最近の新卒向けの採用選考では,Webテストなるものを実施して会社説明会の段階で参加者を規制しているようです。
このWebテストは,(ネットに接続できる環境下にある)自宅で事前に選考試験を受けるというもので,1問ごとに数秒から数十秒程度の時間制限が設けられていて,制限時間内に解答できなければ強制的終了させられ,次の問題へ進むようになっているそうです。
後で解けなかった問題に戻ることも出来なければ,前の問題を見直すこともできません(自宅受験の際のカンニング対策のようです)。

Webテストを実施しているのには,採用選考にかかるコストを削減するという意図があるようですが,これから自社の利益に貢献してくれる人財を発掘するのに手間と金を削るという感覚はどうかと思うんですけどね。

試験のことはさておいて,リクナビNEXTでよく掲載されている転職成功術の特集の中には,まさに転職の常識・慣例がてんこ盛りです。

【関連情報】
6つの転職マナー違反でわかる転職に成功する人・しない人(リクナビNEXT=リクルート株式会社)

まあ,かなり転職に失敗してしまう人たちに問題ありの例が多いのですが,中にはある事例について採用担当者側の不採用理由にこんなものがありました。

修正液を使った履歴書は、やはり失礼だと思う。それが気にならない人とは価値観も合わないだろうし、その書類を受け取った時点で不採用を決めている。(54歳/男性/岡山県)

これは,他社に送った履歴書を修正液で修正して提出する「履歴書の使いまわし」に対する回答として掲載されていたもの。
普通,そんなことするヤツは落とされて当然と皆思うでしょうが,よく見てみると「履歴書の使いまわし」に対する回答とはちょっと違う。
どうやら,修正液を使った履歴書の修正一般に対する批判の模様。

そこで私はツッコミを入れてみたりするのですが,「修正液を使った履歴書は、やはり失礼だと思う」の根拠は?
なぜ「失礼」だと思うの?

例えばですよ,たった一文字間違えただけで苦労して書いた履歴書がおじゃんになるわけですよ。
内容にはまったく問題なくとも,その一字を間違ってしまっただけで,すべて書き直しになるのです。
書き見本を見ながらであっても,間違えるときは間違える。

当然,修正液だらけの履歴書など問題外ですが,ほんの1箇所間違えたので修正液使いましたというだけでこの扱い。
しかも「失礼」の理由付けがはっきりしない。

中には,パソコンでプリントアウトした履歴書は楽をしているからダメとか,他社で使ったやつのコピーなんじゃないかとか邪推している人がいたりするのですが,これもナンセンス。

仕事の上では効率性を求めているクセして,就職活動ではなぜ非効率を求めるのか理解に苦しむところです。
「他社で使ったやつのコピー」とかいう批判も,志望動機以外は全部書くこと同じなんだから手書きだろうが,プリントアウトだろうが内容はコピーしたもんだから関係ないだろうと思うわけです。

修正液を使うのが「失礼」だというのも,プリントアウトした履歴書がダメだというのも,これまでの就職慣例によって刷り込まれた根拠のない常識で,それ自体合理的な理由があるわけではありません。
つまり,古い慣例に縛られた情緒的反応とでも言うべきものであるといえます。

日本の人事・採用活動は旧態依然としているという批判は各方面から提起されているのですが,このような些細なところからも,相変わらず古い考え方に縛られていることがわかります。

Web上から履歴情報をエントリーさせておきながら,改めて履歴書や職務経歴書を提出させるという訳のわからない応募方法を実施しているところがありますが,これも旧態依然とした採用慣例の名残といえるでしょう。

妙な思い込みに支配された常識・慣例は,有能な人財発掘の障害になるだけでしかありません。
本当に必要なのは瑣末なことにこだわることでも,右へならえで同じような採用慣例を貫徹することでもありません。

しっかりと自社が必要な人財像を描き出し,必要な人財を確保するための採用方法を独自の視点から見つけ出そうとする努力が必要です
楽して応募者をふるい落とし,古い慣例にならった色眼鏡で本当に有能な人財が手に入ると考えるのは,非常に浅薄な思考であるといえるでしょう。
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by mmwsp03f | 2010-09-07 10:57 | 労働問題

勘違い?「解雇解禁」論

一見すると,とんでもない主張に見える記事がダイヤモンド・オンラインというビジネス情報誌を発刊しているダイヤモンド社のWebサイトに掲載されています。

新卒やハケンだけを犠牲にすればいいのか? 今こそ正社員の「解雇解禁」を(DIAMOND Online)

この記事は,週刊ダイヤモンド副編集長の遠藤典子氏によるものですが,正直ツッコミどころ満載の内容だったりします。

先ず手始めに,

企業収益が改善するなか、失業率が上昇を続けており、雇用環境は悪化の一途を辿っています。

という記述から。

企業収益が改善しているのに何で失業率が上昇しているの? という疑問。
企業収益が改善しているのであれば雇用環境も改善されるんじゃないのと普通は思いますよね。
こういう場合は「企業収益が改善しているのにもかかわらず」とでもすべきところではないかと。
なんか,小論文添削のような雰囲気になってまいりました。(´д`;)

実は,本来ツッコムべきところはそんなところではなくて,正社員の解雇規制を緩和して整理解雇を一定のルールの下に実現できるようにするという主張こそがツッコミの総本山。
正社員はサービス残業を強いられ、中小企業では不当解雇が横行しています。同じ仕事をしても、正社員と非正規社員では、給料はもちろん、雇用保障に大きな格差があります。

 こうしたさまざまな矛盾や不平等は、どこから生まれるのでしょうか。その解決策を考えたとき、私たちは、解雇規制の緩和、つまり「解雇解禁」を提案します。

というような主張をなされていますが,まず「こうしたさまざまな矛盾や不平等は、どこから生まれるのでしょうか」という問題提起をしておいて,これに対して自分はどのように考えているかがまったく示されていません。

「さまざまな矛盾や不平等」を解決するために「解雇解禁」を主張しているのですから,この点をなおざりにしちゃまずいんじゃないですか?

まあ,この部分だけに限らず全般的にツッコミどころ満載なのですが・・・。

いつの間にか雇用不平等の解消論議から,企業の雇用リスクの話にすり替わり,それがなぜか企業の再編・淘汰へと進んでいくところも,主張に一貫性がありません。
「正社員」の解雇を容易にすることが,なぜ「正社員と非正規社員の雇用保障を平等にすること」に結びつくのか,この内容からは見えてきません。

それから,記事を読んでいて思うことは,この方は労働法や労働判例にちゃんと目を通しているのかということ。
過去の労働判例を見てみれば,これまでに使用者が雇用のルールである労働基準法(労働契約法含む)をないがしろにして,一方的な都合によって労働者を不利な状況に追い込んできたことが判るはずなんですが,それが判っていて「解雇解禁」などとおっしゃっているんであれば,とんでもない勘違いです。

一度大企業の正社員のレールに乗った既得権者にも、事実上の解雇自由を維持したい中小企業の経営者にとっても、「解雇解禁」は受け入れ難いでしょう。

ってなことが書かれていますが,正社員には受け入れがたいですけど,一部の中小企業の経営者にとってみれば「解雇」できるとお上からお墨付きを与えられれば諸手を挙げて喜ぶのではないですかね。

なぜ,これまで労働法・判例(整理解雇の4原則)によって解雇を簡単にできないようにしてきたのかを理解していれば,こういう主張にはならないはずなんですが・・・。
いくら遠藤氏がおっしゃるような「解雇の際の手続きのルール化」をしたところで,労働法を無視して不当な解雇や不利益処分を繰り返してきている企業には,何の効果もありません。
ただ,解雇の自由が与えられたと喜ぶばかりでしょう。

遠藤氏の主張は,正社員もハケンやアルバイト・パートなどの非正規社員と同じにしろといっているように思えます。
安易に「解雇解禁」などということを実現しようものなら,「最もワリを食うのは、われわれの息子、娘の世代」になるはずです。

たしかに正社員として安穏としてたいした仕事をこなしていない人もいます。
しかし,それが圧倒的多数ではないはずです。
まじめに仕事をこなしている正社員を「解雇解禁」によって,失業の危機にさらしてよいのでしょうか?

「新卒やハケンだけを犠牲にすればいいのか?」というキャッチコピーが,「新卒やハケンだけでなく正社員も犠牲にしなくてよいのか?」というように見えてしまうのは,私のうがった見方でしょうか?

解雇をするということは,その人の収入の道を断つということであり,それが解禁され企業の都合によって世に失業者があふれるようになれば,途端に不況へまっしぐらとなるのは経済の素人でさえ判る理屈です。

なぜ労働法や判例で解雇を簡単にできないようにしてきたのか,その理由を理解もせずに「解雇解禁」などということは,少なくとも影響力の大きい経済誌が口にすべきことではありません。
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by mmwsp03f | 2010-08-25 05:12 | 労働問題
新卒者採用が低迷しているということで社会問題化していますが,それに対して日本学術会議が既卒でも卒業後数年は新卒と同じ扱いにしてはどうかという提言を発表しています。

【関連情報】
大学生の就職難深刻、学業に影響…両立へ日本学術会議緊急提言(YOMIURI ONLINE:2010年8月16日)
「意義の乏しい選び合い」改革必要…日本学術会議提言(YOMIURI ONLINE:2010年8月16日)

日本学術会議という学術研究の代表機関がこのような提言を行うということは,かなりな異常な事態なのですが,そのことを企業や就職活動を行っている当人たちはどのように考えているのでしょうか?

読売新聞の記事によれば,この提言を受けて文科省では「業界の協力も得て、提言を現状改善につなげる考え」とのこと。
ただし,文科省のこれまでの教育政策を見る限りにおいては,残念ながら有効な施策を打ち立てることは期待できそうにありません。

それに大学や専門学校などの教育機関サイドが現状改善を図ったところで,経済界がそれに応えなければ結局は「画餅に帰す」ということになりかねません。

要するに,就職活動におけるイニシアチブは依然企業側にあり,彼らの思惑如何で「就職問題」の今後が左右されることには変わりありません。

これまでに新卒の就職をめぐるルールは,都度経団連によって作成され,加盟企業へ提言されてきましたが,そのルールを無視して勝手な採用活動を行ってきた企業が大手でも少なからず存在しました。
結局,法的拘束力のないものを遵守する必要はないという考え方なのでしょうが,そのようなモラリティの欠如が現在問題視されていることも併せて無視されているようです。

さて,ここで問題となるのは,なぜ企業は新卒採用にこだわるのか?という点です。
ぜひともさまざまな企業の意見を伺いたいものですが,新卒と既卒1~2年程度の人にどの程度の
差があるとお考えなのでしょうか?

多くの就職活動をしている学生やその親御さんにとってみれば,ただ単に就職活動で不利にならないようにするために,する必要もない留年をしなければならないのは納得できないでしょう。
それに既卒だからといって,就職浪人1年目で就業経験者と同じ土俵に上らなければならなくなる中途採用でしか応募できないというのはどう考えても理不尽です。

当然のことながら就業経験がほとんどないわけですから,経験者募集に応募したところで歯牙にかけられるわけもありません。 

日本企業の採用活動は旧態依然としているという批判は,さまざまなところで起こってきています。
それなのにもかかわらず,どうしてそのような批判が起こってくるのか,多くの企業で自社または業界における採用活動の慣例にどのような問題があるのかを分析し,改善しようという意気が感じられないのが現状です。

企業にとって必要な人の条件は,「新卒」であることではないはずです。

自らのスキルを磨き,それを仕事に生かしていこうと取り組む姿勢をもつ人こそが必要なのではないでしょうか?

「新卒」で就職にあぶれてしまった人を無能力者のように考える風潮があるようですが,そのような考え方はナンセンスです。
彼らはたまたま「新卒」で就職できなかったのであり,運よく就職できた人とどの程度差があるかは全く不明であるといえます。

運よく就職できた人の中には,とりあえず与えられた仕事をこなすだけでよいと考える人もいるでしょうし,期待していたほど仕事に取り組もうとしない人もいるはずです。
ひょっとしたら「既卒」の中には彼ら以上にスキルを磨いてよい仕事をしてくれる人がいるかもしれない。

「新卒」にこだわる採用活動は,そのような人財を発掘する機会をむざむざ逃してしまうことになるかもしれません。
自らに手かせ足かせを嵌めることになるような採用活動は放棄したほうがよいでしょう。

いいかげん,わざわざマーケットを狭める手法は自らが損をするということに気づくべきではないでしょうか。

【関連情報】
日本学術会議公式サイト
文部科学省ホームページ
社団法人 日本経済団体連合会
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by mmwsp03f | 2010-08-17 10:35 | 労働問題

杜撰な採用活動のツケ

現在,GIGAZINEというブログメディアが社員募集をしているそうです。
ある意味「人材不足」による募集ということですが,人手が不足しているわけではなく,記者・編集者としての資質に問題のある社員がいるため,新たに社員を募集して体勢を立て直したいということのようです。

【関連情報】
人気ブログメディア『GIGAZINE』が涙の人材募集「金の分しか働かない働きたくない面倒くさい書きたくない」【ネットコラム - エキサイトニュース】
【求人募集】GIGAZINEのために働いてくれる記者・編集を募集します

求人募集の冒頭には長々と「募集に至る経緯」というものが記されているのですが,愚痴のオンパレード。

「手が足りないのにもかかわらず、人を雇えば雇うほど私の負担が増していき、ほかの編集部員の給料を出すために月給も何もかも私が一番低いワーキングプア状態で、もう心身共に限界に達して倒れかけました」というような,同情を誘うことを意図した記述まで見られます。

さて,この記事ならびに求人募集を見て思ったことですが,GIGAZINEの編集長は見事なまでの勘違いをしています。

>GIGAZINEで働きたかったわけではなく、どこでも金さえもらえれば良かった、そういう人材を私は雇ってしまったのです。これが大きな間違いでした。
>怒られないとこちらの言うことを聞かないというのは、かなり低次元かつ低レベルで幼稚なことだと私は思うのですが、そういう社員ばかりを雇ってしまった私にも確かに責任があります。

というような言辞は見られるのですが,「雇ってしまった」ことを悔やんでいるだけで,どのような戦略的展開を考えているのかがまったく記されていません。

ただ単に,ニュースサイトの仕事は他の仕事とは違うとか,自分と同じ志を持った人に来てほしいということを主張するばかりで,これまでの採用方法,人材育成の手法についての反省が見られません。

「募集に至る経緯」見る限りでは,問題社員は最初から問題行動をとっていたわけではなく,編集長の組織運営の失敗によって問題行動を起こすようになっていったようです。
そのことがわかっているのにも関わらず体制を立て直すよりも以前に,自分に都合の良い人材を補充することでその場を凌ごうという安易な発想が見られます。

そんなことをやっているようでは,また同じ失敗の繰り返しになるであろうことは容易に想像がつくと思います。

今回の求人募集の課題は,記者・編集者としての基本的なスキルを見抜くことなわけですが,「『価値観』の一致と不一致を今回は最重要視」といっているところから,ひょっとしてそのことが判っていないんじゃないかと思ったりもします。

>GIGAZINEで働くという事は、普通の雇用主と労働者の関係とはまったく違うのです。「ニュースサイトで記事を書くというのは、普通の労働とは絶対に違うのだ!」ということを事前にちゃんと理解していただきたいのです

という記述を見ても,あー判ってないなと思うわけです。
編集長におかれましては,労働契約法と労働基準法をスミからスミまで熟読されることを推奨します。
まあ,意識の問題を語っておられるのでしょうが,これって明らかに「GIGAZINEはコンプライアンスを無視します」と宣言しているのと同じなのですが,よほど腹に据えかねたのか,正常な判断ができない状態になっているようです。

それから「普通の労働とは絶対に違うのだ!」ということを強調されていますが,これはある意味職業差別に通じる考え方だったりします。
自分がなすべき仕事はなんであれ,自分の責任で全うするというのが労働のあるべき姿です。
GIGAZINEの仕事だけが特別なのではなく,仕事とはすべからく責任を持って取り組まなければならないものなのです。
それをちゃんと部下に教えてこなかったことが今回の問題の要因であり,社員の問題行動を助長させていることにつながっているはずなんですが…。


当然のことながら,求人についての要件が最後に付されているのですが,皆さんはこれを見てどう思われますか?

◆募集期間
8月2日(月)~8月9日(月)23時59分まで

◆募集職種
記者・編集

◆勤務地
大阪府大阪市

◆仕事内容
ニュースサイト「GIGAZINE」(http://gigazine.net/)の記事作成・編集

◆給与
応相談

◆勤務時間
応相談

◆勤務形態
応相談

◆応募資格
前歴・職歴・学歴・年齢・性別は就労できるのであれば一切問いません


私がこれを見た感想。
まじめに採用する気があるのか?

採用条件というのは,就職活動をしている側にとっては,応募するかどうか,あるいは入社するかどうかを判断する基本的な材料となります。
それを「応相談」で済ませていることから,明確な採用計画自体が存在しないのではないかと思えるわけです。

しかも,「給与」「勤務時間」「勤務形態」をぼかしているところから,かなりキツイ条件で採用しようと考えていることも匂わせています(「募集に至る経緯」の内容を見ても,キツイ条件で採用しようと考えていることがわかります)。

しかも,仕事内容についてもニュースサイトの「記事作成・編集」だけであって,具体的なことは何も記されていません。
ただ理念を語るだけでは,誰もついてきません。
あくまでGIGAZINEはビジネスであり,好きなことをするのだから労働条件は二の次だという発想では,長続きしません。
すべからくビジネス(経済)というものは,報酬の交換によって成り立っているものです(社会的交換理論)。
実績に見合った報酬を明示せずにGIGAZINEというビジネスに参加せよというのは虫の良すぎる話でしかありませんし,それを無視してビジネスを語ることは滑稽でしかありません。

ビジネスとしてのGIGAZINEに参加することによって,社員にはどのようなメリットがあるのですか?
自分たちのメリットだけを語って,誰かがついてくるとお考えですか?

経営戦略の見えないビジネスに有能な人材が集まることはほとんどありません。
愚痴を言う前に,明確な人事戦略と事業計画を立案し,場当たり的な採用活動ではなくビジネスの基本スキルを見分ける採用方法を確立することが,先決だと思いますが…。
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by mmwsp03f | 2010-08-02 21:49 | 労働問題
前回,「実は親を教育したい」という大学教職員の想いを伝える新聞報道と,それに対する酒井穣さんのコメントを紹介しました。

実は私。
他にも教育すべき人々がいると考えております。
しかも,早急に。

それは人事・採用担当者(人事権を持つ管理職・役員含む)

もちろんすべての人事・採用担当者というわけではありません。
教育が必要なのは,なぜか妙なエリート意識を持って自分たちは一般社員とは格が違うという勘違いをし,採用選考の応募者に対してまともな対応が出来ていない人事・採用担当者です。

さらに,これまでの人事・採用の慣例も改めるべきと考えています。

なぜ,そのように考えるのか。
それは,彼らが考える常識が,世間的に見た場合は常識を逸脱しているからです。

そのように考える理由を,いくつかの事例によって示してみたいと思います。
これは私自身が体験したことと,幾人かの方の証言に拠っています。

【事例1】面接の際に,挨拶をしない。
最近では減ってきているようですが,意外に多い。
応募者に対しては,挨拶の仕方をチェックしていたりしますが,自分の方は「当然マナーは免除」とでもいうような態度。
これは,相手を自分より下位にあると考えているために起こる行動パターンです。
つまり,上から目線ってことです。

本当は,応募者というのは外部の人間なので顧客と同様の扱いをすべき存在です。
自分の態度が相手に不快な印象を与えれば,その不満はその応募者を通じて悪評として世間に公表されることになってしまいかねません(インターネット社会の現代であればなおさらのこと)。
このような人事・採用担当者は,相手が「客」であるという意識も,自分が「会社の顔」だという自覚もありません。
だから,ちゃんと挨拶もしなければ,横柄な態度をとることもあるわけです。

ちゃんと教育が行き届いている企業は,応募者よりも先に自己紹介をします(ちゃんと名刺も渡してくれる場合があります)。
さらに,相手が誰であっても丁寧な対応を心がけているはずです。

【事例2】届いたら即不採用通知を発送する。
応募書類を郵送して1週間以内に返ってくるものは,郵便事情などを考慮しても大概届いた当日中に即決して送り返しています。
ところが,不採用通知には「慎重に検討した結果」などという文言が盛り込まれています。
どういう選考をしているんだと疑惑が起こる対応は,決して常識的とはいえません。

ちなみに,いままでで最短の不採用通知は,応募の2時間後というのがあります(ひょっとして世界新記録?)。
ネットから応募したものなのですが,明らかに慎重ではないのにもかかわらず,メールでの不採用通知には「慎重に検討した結果」の文言がありました。

【事例3】明らかに文例どおりの不採用通知を送りつけてくる。
よく就職エージェントから,応募書類は丁寧に自分をしっかりアピールできるように,見やすくわかりやすく書くようにというようなアドバイスを受けたことがあると思います。

人事・採用担当者も応募書類をキッチリそろえて提出しろと要求してきます。
他社で使った履歴書の使いまわしなんてもっての他。
ちゃんと空欄のないように,自分で考えてしっかり埋めるのが常識と主張します。

ところが,志望動機やら自己PRやら書かせるだけ書かせておきながら,
慎重に検討させていただきましたが,残念ながら貴意にそう結果とならなかったことお詫び申し上げます。

というような,多かれ少なかれこれと同じような文意の不採用通知を1枚送りつけてくるだけ。
明らかに不採用通知の文例をママ,コピーしているだけの文章です。

中には,この通知すら同封せずに応募書類を送り返してくるということもあったそうです。

これは世間的には常識と言えますか?

相手に対しては多大な要求を突きつけ,自分たちの番になるとどういう基準で選考を行い,なぜ不採用となったのかをまったく示すことなく,たった一枚のコピーした紙を送りつけるだけで終わらそうという態度は,常識的とはいえません。

ものすごい数の応募者を選抜しなければならないから大変なのはわかりますが,だったら募集方法を考えろと言いたいですね。
「自社が求める人材」を明確に示し,採用基準をあらかじめ告知しておかないから,ものすごい数の応募者が殺到するのは当たり前です。

しかも募集広告には,「多数のご応募お待ち申し上げております」の文字が…。

そんなに大変だったら,なぜキチンとしない。
しっかり応募者一人ひとりを見て判断できないような募集方法を採るほうが悪い。

もし応募者一人ひとりを見て,「慎重に検討」した結果不採用にしたのであれば,その理由を明示できるはずです。
ところが不採用の理由を問うても,皆口をそろえて不採用理由は開示せず

こちらから問い合わせても無視するという対応の企業もありました。

果たして,このような対応が世間的に見て,常識的だと言うことができるでしょうか?

実は,まだまだあるんですよね。
人事の非常識案件について,私はかなり重大な問題だと考えておりますので,この件については続くということで…。
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by mmwsp03f | 2010-07-10 19:25 | 労働問題