まあ思いついたことをつらつらと書き綴っています(写真は奥多摩から見た富士山)。


by M.M@Kanagawa
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カテゴリ:政治・国際事情( 18 )

領土問題と領域概念

最近,尖閣諸島と竹島(独島)をめぐる領有権問題がクローズアップされ,中国・韓国両国との外交関係悪化,世論の沸騰といったことが話題となっています。

この情勢については,メディアでも頻繁に取り上げられているので改めてここで説明するまでもないと思いますが,ひとつこの問題を見る上で留意すべきことがあります。

それは,韓国と中国とでは対日姿勢に大きな違いがあるという点。

表面的に見れば,両国ともに共通して反日的なナショナリズムを鼓舞し,自国の主張を押し通そうとうする強引さから似た者同士という印象を強く受けますが,韓国と中国では領域に対する基本的な考え方に大きな違いがあります。

今回の韓国の場合,李明博(イ・ミョンバク)大統領が自らの政治的地位を維持したいがための政治的パフォーマンスに端を発するナショナリズムの扇動であって,非常に底の浅いものであると私は考えています。
反日感情を自己の保身に利用しているだけであって,内政での数々の失態を強硬外交によって支持率を挽回しようという使い古された政治手法に韓国国民が振り回されているといった感があります。

こういう外交姿勢は,韓国政府が自国の品位を自ら汚す行為なわけですが,そのようなことも考えが及ばないほどに見境がなくなっています。

ところが中国の場合は,単なる政治的パフォーマンスでは片付けられない思想的背景があると思います。

日本では尖閣諸島問題ばかりが注目されていますが,中国は日本以外の国々とも激しい領有権をめぐる紛争を繰り広げています。

主だったところでは,ASEAN諸国,インド,パキスタン,ブータンなどの国々と未だに国境線をめぐって事あるごとに衝突しています。
中国とその周辺国が表示された地図を見てみると,ところどころ国境線が点線になっているところがありますが,そこが未だに国境問題未解決の地域です(地図には明示されませんが,海上における国境問題も当然のことながら存在します)。

【関連情報】
東アジア地図(GoogleMaps)

中国は,第二次世界大戦後にも幾度となく国境紛争を繰り広げていたりますが,主だったものを挙げると以下のようなものがあります(領有権をめぐって実際に武力衝突が起こった事件)。
1969年 中ソ国境紛争(ダマンスキー島事件あるいは珍宝島事件)
  旧ソ連とのウスリー川の中州である島の領有権をめぐる武力衝突
1959~62年 中印国境紛争
  インドとのカシミール地方の領有権をめぐる紛争
1984~89年 中越国境紛争
  ヴェトナムとの国境地帯における高地の専有をめぐる武力衝突

日本に対しては未だに武力を行使するまでには至っていませんが,中国は国境問題を武力によって解決を図ろうとしてきた過去があります。
国境問題に対して直接行動に出るということは,それだけ中国が領有権問題に対してシビアな国であることを示しています。

その中国がなぜ尖閣諸島問題で実力行使に出ないのか。

それは,中国海軍の実力がイマイチなのもありますが,やはり日本の後ろ盾となっているアメリカを警戒して手を出すのを躊躇しているというのが大きいでしょう。
それに実力行使が国際世論に与える影響を考えると,中国にとってマイナス面が大きいというのもあるでしょう。

つまり,中国は韓国のように「日本憎し」という感情に支配された行動として尖閣諸島問題に対しているわけではないのです。

それに中国は,自国は世界の中心で最も進んだ文明国であり,周辺の国々は中国に従うべき存在であるという思想を長きにわたって保持してきた国です。
このような思想を「中華思想」(中華とは,世界の心に燦然と咲き誇る「=はな」という意味です)といいます。

彼ら中国人は,中国の周りに住まう夷狄(いてき=野蛮人)は中華の恩恵によって文化・文明を享受しているのであり,文明国である中国に従うのは当然という発想を伝統的に持っていました。

このような歴史的・思想的バックボーンを持つ中国人は,本来的に「領域」「領土」という概念を持ち合わせていません。

じゃあ,なんでやたらいろんなところで領有権を主張するんだ?という疑問が起こってくると思いますが,考えられることしては,以下のことが挙げられると思います。

1) 世界は自分たちのものという意識が根底にあるので,特に中国とその周辺地域にあるものは必要に応じて所有権を主張できると考える。
2) 中国は周辺諸国に対する指導的立場の国(春秋戦国時代風に言うと「覇者」)なので,中国の意向に従うのが当たり前と考えている。
3) 19世紀の欧米列強の侵略以降,欧米流の所有権の概念が移植され,それに伴って「領域」「領土」という考え方も浸透していった。

もともとの「中華」という世界観を欧米流の領域概念によって補強したってところですかね。

そして,中国人は面子を非常に重んじることでも有名です。面子を潰されることは中国人にとって許すべからざる屈辱です(中国の文化的影響を強く受けている韓国も少なからずこの傾向があります)。
したがって,日中戦争は中国の面子を叩き潰した歴史的事件なので,彼らはいつまでも戦時中の日本の所業を非難し続けるわけです。

日本に限らずあらゆる国にとって,外交上お付き合いしていく相手としての中国は非常に厄介な国と言えます。

特に領有権問題で中国から譲歩を引き出すのは並大抵のことではありませんが,まったく方策がないというわけでもないと思います。

少なくとも下手にこちらが大騒ぎして,中国の面子を潰してしまうような行動をとることは得策とはいえません。

決して卑屈になる必要はないのですが,まずは相手の特質を知り,対処の仕方を考えていくことは非常に重要だと思います。

先日の丹羽大使が乗った大使館車両が襲撃された事件についても,中国政府の面子に訴えかけることが迅速な犯人逮捕につながるものと思います。

やり方次第では,意外と領有権問題もすんなりと解決へ向けて進展していく可能性はあると思います。
それは,あくまで中国政府を立ててということが前提となるとは思いますが・・・。
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by mmwsp03f | 2012-08-29 12:14 | 政治・国際事情
去る6月16日,大飯原発再稼働が正式決定されましたね。

すでに野田首相は,正式決定より前の6月8日に記者会見で「国民生活を守る」という理由により大飯原発再稼働すべきという自らの判断を表明していましたから,今回はあえて記者会見は行わないとのことで,今回は決定のみが報道各社に伝えられる形となっています。

【関連情報】
野田首相会見 冒頭 大飯原発3、4号機の再稼働方針を表明、理解求める(Youtube-SankeiNews)
野田首相、記者会見せず=大飯再稼働を決断も(時事通信社-Exciteニュース)
<大飯再稼働決定>経済界に懸念なお(毎日新聞-Yahoo!ニュース)

大飯原発再稼働についてはかなりの反発が予想されていましたが,その反面原発再稼働を求める声が経済界を中心に起こっており,野田総理曰く「国論を二分する」事態をなっています。

しかし,原発再稼働を求める声の中には「安全が確保できるなら」という前提条件つきでの賛成であり,積極的に再稼働を求めているのは少数派であると考えられます。

そこで首相は,「唯一絶対の判断の基軸」であり,「国として果たさなければならない最大の責務」として「国民生活を守ること」として,その「国民生活を守る」ことの骨子を2つ挙げて説明しています。

1) 時代の子どもたちを守るために,福島原発事故のような事態は決して起こさない
2) 計画停電,電気料金の大幅な高騰などの日常生活に悪影響を及ぼす事態をできる限り避ける

野田首相が言う「福島原発事故のような事態を決して起こさない」ことというのは,考えられる原発の耐震性・津波に対する対策を講じているということであって,現実に原発の安全性が確保されているということではありません。

安全性については「絶対というものではない」とコトワリを入れています。
コトワリを入れるまでもなくあらゆることについて言えることなので余計な発言のように思えますが,これは「あの時は大丈夫だといったじゃないか」というバカらしいツッコミに対する伏線としての発言です。

さて,野田首相の会見での発言内容を聞いてお分かりの通り,政府は原発維持を基本方針としていることが明らかにされています。
原発の信頼性回復を前提とする対策を講じると発言していることから,そのことは明らかですね。

そして,2番目に挙げている「国民生活を守る」ことの主旨として,日常生活への悪影響を回避することが挙げられています。

結果,原発なくして日本経済,日常生活は成り立たないので,原発の安全性を追究し続けるから,原発再稼働は実施するという論理が成り立つことになります。

首相は「再生可能エネルギー」の開発も推進し,原発依存を極力なくしていくということを言っていますが,それ以上の具体的なことは何一つ示していません。

このことに対して,当然の反応として原発再稼働反対デモが首相官邸前で行われました。
首相官邸前で300人が大飯再稼働反対デモ(日本経済新聞-2012/6/16 12:01)

大飯原発の再稼働に反対する市民団体らによるデモが16日午前、首相官邸前で開かれた。集まった約300人の参加者が再稼働を決めた政府、地元自治体に抗議した。

 小雨が降る中、「大飯原発再稼働反対」「原発NO!再稼働NO!」などと書かれた横断幕やプラカードを掲げた参加者は「首相は原発再開をやめろ」と官邸に向かって訴えた。

 午前10時すぎには、デモを呼びかけた市民団体「再稼働反対! 全国アクション」のメンバーが、野田佳彦首相に対し再稼働反対を求める要望書を内閣府の職員に手渡した。

 山梨県から来たという自営業の男性(47)は「事故があったにもかかわらず、また『原子力ムラ』の論理で再稼働が進められようとしている。許せない」と憤りをあらわにしていた。
なぜ,このようなデモが起こり,批判が相次ぐのか?
それは皆さんもお分かりのように,原発維持が大前提となっている発言だからです。

再生可能エネルギーの開発といったところで,原発依存を極力減らすというだけで脱原発を目指す発言ではないところが透けて見え,本気で取り組む姿勢が見られないから,大きな反発を呼ぶことになります。

去年の震災の経験から,原子力は現在の我々には手におえる代物ではないことが明らかになったはずですが,それでもなお原発維持にこだわるのでしょうか?

それは,恐らく下記の理由によるものと考えられます。

1) 原子力に代わる非常に大きなエネルギー供給システムが存在しない(事実はどうあれ,原発維持派にとって最も効率的で安価な電力供給システムということ)
2) これまでの原子力発電の開発コストに対する相応の見返りをまだ享受していない(日本の原子力発電が軌道に乗ったのはせいぜい20年ぐらいの期間で,それまでかけた労力をまだ回収していないという思いがある)
3) 新たな再生可能エネルギーを開発するコストをかけたくない(コストをかけただけのリターンが期待できない)

いずれ,現存する原発は順次老朽化による廃炉をしていかなければならないのですが,少なくとも全基廃炉になるまでは原子力発電をやめる気ないのでしょう。
しかも今の調子だと,原発の廃炉も「まだ大丈夫,まだ大丈夫」と先送りにされそうな感じです。

一方,反原発の立場はどうでしょうか?

反原発の急先鋒と目されていた政治家の一人,橋下徹大阪市長が期間限定での再稼働を「事実上容認」したことで,一挙に再稼働への流れが出来上がった気がします。

この「事実上容認」によって,橋下市長は主張に一貫性がないなど各方面から批判を受けることになりますが,現実的に考えれば期間限定での再稼働はやむなしといったところでしょう。

単に反対を繰り返しているだけでは何事も解決しないので,一定の譲歩をしたということでしょう。

橋下市長は,いわば交渉のセオリーに従っただけのことで,最初は強硬に反対して政府から一定の譲歩を得ようとしていたようですが,結局は自分が譲歩する結果となってしまいました。

しかも,彼の「事実上容認」が原発維持派に利用され,周辺自治体の首長も再稼働の流れに身をゆだねることになってしまったような印象です。

限定的な再稼働によって電力を一時的に確保するが,その間に漸次原発を減らして最終的にはゼロにする戦略を構築していくように国を動かしていくというのが,恐らく橋下市長の目論見だったと思いますが,今のところ,その効果は見えてきません。

経団連の米倉会長は,橋下市長の夏季限定再稼働要求に対して「経済活動、事業(の実態)を全然ご存じない発言だ」と批判したとのことですが,彼が経済活動全般を見通したうえでの発言とは思えません。

さらに言えば,「事業を全然ご存じない」の「事業」とは,この場合大手電力会社の「事業」のことであり,大手電力会社の「事業」と深く結びついた企業・団体の「事業」のことです。

なぜ,そんなことが判るかって? そりゃあ,文脈からですよ。
電力が足りない時期に限定した再稼働容認に対する批判なわけですから,原発はそんな簡単に起動させたり制止させたりできないという意味にとれます。
一般企業は電力を供給してもらえれば「事業」に影響はないわけですし,原発を止めたり稼働させたりする立場の人たちの「事業」であることがわかります。
それに,これまでの発言からも,米倉会長に(トータルな)経済・社会を語るだけの力がないのは明らかですし…。

特定の「経済活動」,特定の企業・団体の「事業」を前提とした話をしているから原発維持の主張を崩さないわけですね。
まずは,このような既得権益を保持している勢力の論理を突き崩すための方法を突きつけることが,反原発を唱える方々が一歩前進するために必要なことであると私は思います。
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by mmwsp03f | 2012-06-17 12:53 | 政治・国際事情
いやあ、このツッコミ企画がこれほど長くなるとは思いませんでした。正直なところ…。
それだけ、自民党の憲法改正草案が超一流のできの悪さ故とご理解ください(笑。

【基本資料】
自民党:日本国憲法改正草案対照表(PDFファイル)

憲法改正においては、憲法の存立を基礎づける根本原則を損なう改正を行うことはできないというのが通説となっています(これを限界説といいます)。

ところが自民党案では、この憲法の根本原理を大きく損なう改正案が提示されています。

現行憲法では「公共の福祉」として示されていたものが、自民党案12条・13条では「公益及び公の秩序」と変えられています。
これは多くの人から批判されていますが、なぜ批判されるかというと「公共の福祉」と「公益及び公の秩序」では全く意味合いが異なるからです。

東京新聞の記事(4月27日)に記載されている通り、「個人同士の関係よりも、国全体の秩序が優先される趣旨」へと変えられています。

「公共の福祉」とは、「自分と他者の人権が衝突した際にバランスよく調整する」(東京新聞記事)人権の調整原理であり、前提として諸個人の基本的人権を尊重するという考え方をベースにしています。

自民党案の「公益及び公の秩序」は、人権を享有する諸個人を超えた存在(つまりは国家)の利益・秩序ということであり、これに従うことを要求しています。
つまり、主権者たる国民の権利を尊重する以前に「公益及び公の秩序」を尊重しろということに他ならないのです。

なお大日本帝国憲法27条には、下記のような規定があります。
第27条 日本臣民ハ其ノ所有権ヲ侵サルヽコトナシ
    2 公益ノ為必要ナル処分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
「臣民(天皇の臣下たる民)は所有権を侵害されないよ。ただし法律で定める公益のために必要な場合を除いてね」という規定ですが、これと同じことが自民党案13条において所有権に限定されない基本的人権全般に適用されているのです。

このこと一つとっても、憲法の根本原則を大きく損なう不当な改正案ということができます。

他にも数多くのツッコミどころがありすぎて、いちいち取り上げることができません。

他の部分については別の批判者の方にお任せするとして、最後に一点だけ…。

それは、憲法改正条項に係わるところです。
自民党案100条1項
 この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする。
現行憲法第96条1項
 この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
自民党案と現行憲法を比較してお分かりのように、憲法改正のハードルが下げられています。
つまり、自民党はこの改正案が可決されたあとも、憲法を追加改正する気満々ということです。

自民党は憲法全般に手を加えてきていますが、これをすべて通す気はないと思います。

というよりも、彼らが改正の中心にすえている安全保障・緊急事態・憲法改正関連の条項を可決の必須条件として、これを通すことに力を注いで、それ以外のところは可能であれば通すつもりだと思います。

なかには、とりあえず変えてみましたという「どうでもいいけどとりあえず改正」という感じのものも見受けられますので、ほとんど犠牲にしても本丸だけは通すつもりでしょう。

自民党サイトの保利耕輔・自民党憲法改正推進本部長のインタビュー記事を見てみても、自民党がどこを本丸と見据えているかが判ると思います。

【関連情報】
今こそ自主憲法の制定を(自民党¦Lib Dems)
保利耕輔・憲法改正推進本部長インタビュー(自民党¦Lib Dems)

それに、改正条件を緩和できれば、徐々に自分たちの思惑通りに改正を進められる可能性が高まるというものです。

それにしても、新しい時代に即しつつ憲法の根本原理を保持することが可能だと、うまいこと偽装したつもりでも、多くの人がその危険な思惑を看過してしまうお粗末な改正案です。

こんなものがすんなりと「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」による発議を経て、「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成」を得られると思っているのでしょうか?

ただでさえ、自民党の支持率は低いままですし、少なくとも「過半数の賛成」による「国民の承認」は得られそうにありませんね。
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by mmwsp03f | 2012-05-07 16:57 | 政治・国際事情
さて、自民党による憲法改正草案(以下、自民党案)に対するツッコミ企画も第3段になってしまいました。

【基本資料】
自民党:日本国憲法改正草案対照表(PDFファイル)

今回は個別の条文について見ていくわけですが、ここでは多くの人が批判しているところは別の方に任せて、ちょいと違ったところから攻めてみたいと考えております。

まずは、自民党案第1条。
現行憲法では天皇を「国民統合の象徴」としか規定していないのに対し、天皇を「日本国の元首」としているところが大きなポイントとなっています。

前々回、私はこの自民党案を「懐古趣味・復古主義的色合いが強い」と申し上げましたが、それが色濃く現れているのがこの第1条案です。

実はこれ、大日本帝国憲法4条の「天皇ハ国ノ元首ニシテ」を復活させたものなんですね。
通常、国際政治の慣例上、君主国(国民を主権者とする場合含む)では国王(天皇)が国家を代表する元首とされるのが一般的で、「元首」という文言が付け加えられたからといって主権が君主に存在することを示しているわけではありません。

それなのに何でいまさら「元首」?とか思うわけですが、自民党の諸氏は戦前に対するある種のノスタルジーをお持ちなのかもしれませんね。

ちなみに、自民党案では天皇の国事行為の範囲が拡大され、天皇家の負担増となっています(第6条5項で、「地方自治体その他の公共団体が主催する式典」への出席が義務化されています)。
その代わりなのかわかりませんが、皇室財産についての規制が憲法の条文において緩和されています。
第8条
 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が財産を譲り受け、若しくは賜与するには、法律で定める場合を除き、国会の承認を経なければならない。
現行憲法では、皇室財産については一律「国会の議決」を必要としているはずですが、実は皇室経済法2条において都度国会の議決を必要としない例外が定められています。
わざわざ自民党案で「法律で定める場合を除き」と付け加えているのは、現行憲法の規定上、この皇室経済法2条が憲法違反となる恐れがあるからでしょう。

皇室経済法2条は、これまで自衛隊の憲法解釈において自民党政権が行ってきた解釈改憲と同じ論理に基づくものですが、流石に自衛隊同様に憲法の裏づけがないのは不味いということで、今回の自民党案に盛り込んできたものと思われます。

そして、これまで何度となく議論が繰り返されてきた問題の現行憲法9条にかかわる部分については、わざわざ「第2章 安全保障」と章立てとし、その規定を3か条に増やしています。
つまりそれだけ力を入れているということの証左なわけですが、その割には条文の内容がお粗末極まりない。

一言で言ってしまえば「矛盾だらけの改正案」といったところですね。

現行憲法9条の「武力による威嚇又は武力の行使」を原則生かして「武力による威嚇及び武力の行使」としていますが、この一つを見ても自民党がいかに迂闊な政党であるかが判ろうというものです。

「又は」というのは、この場合、前後の言葉の選択的関係を示すものですが、「及び」は全くの並列的関係を示す語です。
したがって、自民党案では武力による威嚇・行使ともに否定ということになります(つまり、武力の保持の全否定)。
現行憲法よりもさらにハードル上げちゃったねってことです。

そのくせして、「自衛権の発動を妨げるものではない」とか「国防軍」規定を盛り込んでいるという体たらく。
頭悪いですね。自民党。

ついでに言うと、軍事力を持つということはそれだけで十分「武力による威嚇」になりますし、自衛権を行使するということは「武力の行使」になるんですがね。
日本語わかってんのか。自民党。

それはさておき、9条に関する自民党案で特に注意しておきたいことが2点あります。

まずは、条文中に頻繁に登場してくる「法律の定めるところにより」とか「法律が定める」という文言。

もうお気づきの方も多いと思いますが、これは大日本帝国憲法の条文によく登場する「法律(命令)ニ定メタル場合」とか「法律(命令)ノ定ムル所」と同じです(同様の表現として「法律ノ範囲内ニ於テ」というのもあります)。
実は、この文言は「臣民ノ権利義務」に関する規定の中で頻繁に登場する文言なのですが、それが9条関連の条文案の中に頻繁に登場してきます。

これは、何を意味するのか?
単純に考えれば軍を法律の統制下に置くということになるのでしょうが、実は事はそう単純ではありません。

これは、立法によって憲法の拘束を受けることが無いようにするための措置なのです。
つまり、国会で安全保障に関する法律が通ってしまったら、憲法はそれを止めることができないということです。

9条の2、2項では国防軍は「国会の承認その他の統制に服する」とありますが、それはあくまで「法律の定めるところにより」であって、国防軍の行動の自由を大幅に認めた法律が定められれば、逆に国会が法律の足かせによって国防軍を統制できなくなります。

したがって自民党案の「法律の定めるところにより」は、国防軍を統制するよりも法律を根拠として軍に対する統制を緩和することを目指したものであると考えられるのです。

そしてもうひとつは、自衛隊の国防軍改組によって徴兵制導入を企図していると見られる点。
第9条の2 4項
前二項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める
第9条の3
国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。
上記の自民党案にある条文のうち、下線部分は要注目です。

憲法の条文に国防軍の組織についての基本的な定義も無く、「法律で定める」として逃げているところが、解釈改憲を繰り返してきた自民党らしいところです。

憲法案で徴兵制を明文化してしまえば、国民の反発必至で憲法案が潰れかねないと思ったのでしょう。
だから、こういう姑息な方法を取ってきているわけです。

この憲法改正草案が通った暁には、「国民と協力して」主権と独立を守るための国防軍を組織するための徴兵制導入を図ろうという意図が見え見えです。
まったくもって潔くありません。

これだけ見ただけでも、危険な改正草案であることが判ると思います。

この後の条文にも危険がいっぱいなトラップが仕掛けられています。

ということで、この自民党案に対するツッコミ企画はまだ続きます。
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by mmwsp03f | 2012-05-06 11:24 | 政治・国際事情
さて、前回の続きです。

今回は具体的に自民党が「時代の要請、新たな課題に対応した」と自画自賛する日本国憲法改正草案(以下、自民党案)の内容に踏み込んでみたいと思います。

【基本資料】
自民党:日本国憲法改正草案対照表(PDFファイル)

まず一番に気づくのが、憲法前文が簡素化され、短くなっているという点。

毎年毎年、憲法前文を暗記させられている中学生にとっては大歓迎といったところですが、短くなったから良いというものでもありません。

現行憲法の前文は、「長ったらしくてくどい」ので簡素な表現にまとめましたといいたいところなんでしょうが、この簡素化された前文の自民党案は現行憲法が最も重視する基本理念を大幅にカットしたものとなっています(当たり前のことですが、前文での基本理念のカットに対応して、条文も変えられています)。

たしかに現行憲法の前文は正直「長ったらしくてくどい」、お世辞にも読みやすくわかりやすい文でもありません。
ですが、憲法全体の骨子となる基本原則(国民主権・基本的人権の尊重・恒久平和主義・対等外交の原則)を明示した非常に重要な文章となっているのです。
自民党案では、そこいら辺の理念・基本原則がおろそかにされています。

それに自民党案は、現行憲法の前文に比べて重みがありませんね。
なぜそのような理念を憲法に盛り込むに至ったかという理由も明示されず、「長い歴史と固有の文化」だの、「自由と秩序を重んじ」だの、「美しい国土と自然環境を守り」だの、「教育や科学技術の振興」だの、「活力ある経済活動を通じて国を成長」だの、単にご立派な言葉を列挙しているだけの空文でしかありません。

まったくもって考え抜かれた文章とはいえず、言葉は悪いですが「薄っぺらな文字の羅列」というのが私の抱いた感想です。

それに対して現行憲法の前文は、不恰好でも我々国民に対して理念を訴えかける真摯さが感じられます。

長年にわたって「憲法改正」を訴えかけてきた割には、前文からして自民党案はお粗末なものと言わざるを得ませんね。
谷垣総裁は、この自民党案の「出来栄えに胸を張っている」そうですが、内容をちゃんと精読していないんだろうなと思わざるを得ませんね。

ふつう、最初に出した憲法改正草案には、どこかしら不備があるかもしれないと考えると思うのですが、そういうことは考えず自己陶酔の世界に浸っているのかもしれません。

そりゃー、危険極まりない。

実際に、各条文案に目を通していただけば判りますが、かなり危険な仕掛けが仕組まれていたりします。

そこいらのところは、また次回ということで、もう少し続きます。
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by mmwsp03f | 2012-05-04 23:21 | 政治・国際事情
日本国憲法施行65周年に当たる5月3日に先駆けて、自民党ならびにみんなの党、たちあがれ日本などの旧自民党系の議員が多数を占める保守系政党が、相次いで改正憲法草案を公表しました。

このうち、条文として内容を明示しているのは自民党だけで、みんなの党やたちあがれ日本の改正憲法草案は未だ構想段階で、具体的な形は出来上がっていないようです。

自民党は、結党以来憲法改正を綱領(政党の基本方針・目標などを明示したもの)に掲げ、前世紀より党内において憲法改正のための研究会を組織して討議してきた模様です。
言ってみれば、自民党は筋金入りの改憲推進政党ということができます(そこが他の保守系政党とは違うところでしょう)。

自民党は年季が入っている分、他と差別化するためにも単なる構想としてではなく条文として草案を明示していますが、問題の草案の内容についてはどうでしょうか?

下記のリンクの中に自民党のWebページがありますので、そこからPDFファイルを開くと憲法改正草案が現行憲法の条文と併記して載せてありますので、そちらをごらんいただければ内容を確認することができます。

【関連情報】
「憲法改正草案」を発表(自民党 Lib Dems)
自民 憲法改正案を発表(NHK NEWSWEB)
自衛隊は「国防軍」 自民が新改憲案 天皇 日本の元首(東京新聞 TOKYO Web)
福島党首 自民憲法改正案批判(NHK NEWSWEB)
憲法改正の基本的考え方を発表(みんなの党)
4月25日・たちあがれ日本 「自主憲法大綱案」発表記者会見(YouTube たちあがれ日本チャンネル)
各党の憲法改正案 自民、みんな、たちあがれ 改正案を比較すると…(産経ニュース)

さて、皆さんはこの憲法改正草案ご覧になって、どのように思われたでしょうか?

みんなの党やたちあがれ日本は草案が具体化されていない分、それほどではありませんが、自民党はその内容に関してかなりの批判が寄せられています。

その批判は、主に天皇を国家元首と明記、国民が尊重すべきものとして日章旗を国旗とし君が代を国歌と明示、憲法9条がらみの安全保障問題(自衛隊の国防軍改組)、「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」として再規定といった点に集中しているようです。

上記のリンクにある東京新聞のWebサイトの記事によれば「人権より秩序優先の改憲案となった」とあり、保守色の強い内容になっているとされています。

当然のことながら、社民党と共産党はこのような自民党の改正草案に噛み付いています。

私の場合は噛み付きはしませんが、そもそもの理念の段階で自民党の改正草案は評価に値しないものであると考えています。
ついでに言うと、保守色が強いというよりも懐古趣味・復古主義的色合いが強いといったほうが正しいような気もしますね。

それではどこが評価に値しないかというと、上記のリンクにも載せている自民党のWebページに記載されている内容をごらんいただきたいのですが、そこには下記のようなことが書かれてあります。
抜き書きした部分が、主に私が批判するポイントになります。
占領体制から脱却し、日本を主権国家にふさわしい国にするため…
未だに彼らは、日本は連合軍の占領下にあり、自主的な憲法を制定しないと実質的な主権国家に成り得ないと考えているようです。
まあ、自分は保守だといっている人は、現行憲法は強制されたもので真に自立するには自主的な憲法を作るべきなんて言っているんで、こういうズレた主張をするのは当然なのかもしれませんが。
主要国を見ても、…憲法改正を行っています。しかし、日本は戦後一度として改正していません。
他国が何回改正しているかなんていうのは正直どうでもいいんですよ。
日本の政治家や官僚は、自分たちの政策の有効性や正当性の根拠として他国との比較というのをよくやります。
他の国がやっているのに日本でやっていないのはおかしいとか、他国で有効性が実証されているから日本でもやるべきだとか言ったりするわけですが、日本独自の自主憲法制定するのに、何であんたらは他国のことばかり引き合いに出すの?とか、ひねくれた私は考えたりするわけです。
日本国民自らの手で作った真の自主憲法となります。
正しくは、「自民党が自らの手で作った憲法草案が国民投票で承認されれば、国民に承認された自主憲法になりうる」です。
「真」の意味を履き違えんでほしいですね。
「国民自らの手で作られた真の自主憲法」は、国民の直接参加によって創られた憲法草案を国民自身が承認した場合のみです(まあ、実現不可能ですが)。

具体的な条文の内容についてなのですが、ここではすべてを網羅的に扱うことは無理なので、とりあえず部分的に気になるところをピックアップして見ていきたいと思います。

とりあえず、本日はこれまで。

次回に続く…
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by mmwsp03f | 2012-05-03 21:47 | 政治・国際事情
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版にて、「【投票】菅首相は辞めるべきか辞めざるべきか」という記事で意見を募集していたので、ちょっと思うところがあって投票ならびに投稿をしてまいりました。

私は「こんな時期に一日も政治的空白を作るべきでないから辞めるべきでない」に投票し、下記のような意見を投稿いたしました。
与野党双方から無責任な首相退陣論が提起されているが、ただ単に「やめろ」を繰り返すばかりで震災復興のビジョンを提示するものがいない。
「国民にとって極めて不幸」なのは、この体制でいくことなのではなく、与野党一致団結して事態の改善にあたろうとしないことである。
今、菅総理が辞めたからといって、その代わりに事態を収束すべくリーダーシップを発揮する人物が果たしているのだろうか?
閣外協力などという逃げで実質的に協力しようとしない自民党に期待など出来ないし、その他の野党も民主党政権を批判するばかりで、なんら有効な方策を提示しているようにも見えない。
今、総選挙をしたとして、現時点で政策協力できない野党に未曾有の国難を解決へと導くことができる政党内閣を組織することなどできるだろうか?
結局、小党分立で意見も政策もまとまらず、悪化の一途をたどるのではないかという不安がよぎるのは私だけだろうか?

他の方々の投稿を見たところ、私同様に首相の首をすげ替えることに疑問を持つ方々も多いようです。

当初は「衆議院を解散し、総選挙をして国民の意思を確認する」が3割を超えていたのですが、17日午前の段階では「こんな時期に一日も政治的空白を作るべきでないから辞めるべきでない 」が3割を超えて逆転しています。

これは冷静に考えれば当然のことで、今この時期に総選挙を実施している余裕など無いからです。

記事中の片山総務相が発言している「ここで大きく政治の体制を変えることは大変大きなロスを生じる」というのが実際のところで、政権交代や民主党内での代表選び直しなどをやっている間に、どんどん災害復興が先延ばしになり、原発問題への緊急対応もさらに後手に回ることになってしまいかねません。

さらにいうと、現政権への野党による批判の多くは重箱の隅をつつくような瑣末なことが多く、この緊急時にすべきことではありません。

例えば、菅首相の現地視察は被災地の現状把握のために普通に行われていることであって、それによって対応が遅れたというのは言いがかりにしか過ぎません。

福島第1原発をめぐる問題では、メディアや在野の人々から政府を信用できないというような言説が見られますが、何をもって信用できないというのでしょうか?

事態は刻一刻と変化しているのであって、それに伴って政府が提供する情報に変化があるのは当然のことですし、以前には把握しきれていなかった状況が今になって判ったので、それを情報として開示すると、途端に言っていることが違うと非難するのは、全くナンセンスです。

現政権はこれまでに経験したことの無い未曾有の大災害への対応を迫られているのであって、対応の不備や間違いがあるのはある程度しかたの無いことです。

ここで一番問題なのは、対応の不備や間違いがあると批判するだけでサポートをしようとしないことであって、対案も無いくせに無責任な政権交代を口にすることではありません。

この記事への投稿者に「ないものねだり」という投稿名の方がいますが、この方が言っている事はもっともなことで、一般に流布されている政権への悪評よりも現実を見据えることが今もっとも必要なことなのです。

与野党はくだらない政争を繰り返す時ではなく、現政権が震災復興と原発問題を解決できるようにサポートすることが求められているはずです。

特に自民党は、現在に至る体制をつくりあげ、維持してきたわけですから、何をどうしなければならないかが判っていなければならない立場です。
自ら名乗りを上げて原発問題の解決へ尽力すべき立場であって、自分たちの失策を棚に上げて現政権を批判するなどもっての他です。

批判などではなく提言をせよ。

自分が何をなすべきかを考えて、即実行せよ。

これまでに何度と無くいろいろな方々から指摘されていると思いますが、いま政治家に求められているのは上記の2つのことのはずです。

民主党元代表の小沢氏は、「いまの状況を続けることは許されない」と菅政権を批判しているそうですが、そういうあなたは何をしてきたのですか?と問いたい。

外野からあれこれいうだけで、具体的な解決策を提示していない時点で、野党自民党と同じくノイズを発しているだけでしかありません。

無責任な首相退陣論よりも、具体的な施策を提起せよ。

これ以外には、ありえないというのが今回の結論です。

【関連情報】
■「【投票】菅首相は辞めるべきか辞めざるべきか」(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版)
小沢氏、首相の退陣要求示唆 ネットの動画番組で
(政治 - エキサイトニュース)
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by mmwsp03f | 2011-04-15 18:33 | 政治・国際事情

争点は防災と原発!?

さて、明日の日曜日は統一地方選ですが、告示前に東日本大震災が起こってしまったため、選挙に対する注目度はガクンと下がってしまいました。

TVやネットなどでも話題は震災と福島第1原発関連の話題に集中していたために、その他の話題や事件の影が薄くなってしまった感があります。

また、各候補者の選挙活動も自粛気味となったようで、私の地元でも実際に選挙運動が行われているのをあまり見かけたことがなく、今週の半ばごろから駆け足であわただしく選挙運動を展開していたようですね。

菅政権への批判の集中によって不利な立場にいる民主党の市議会候補は、その中でも早くに選挙運動を展開していましたが、それも先週の土曜日ぐらいからはじめたみたいでした。

アピールの期間が短く、しかも選挙公報の配布も遅れ気味でしたので、どのような候補がどのような選挙公約を訴えているのか、ほとんどよくわからないという方もかなりいらっしゃると思います(私のところでは、選挙公報が自宅に届いたのが水曜日)。

もともと選挙に関心が薄い人が多い中、日本の多くの人が選挙よりも被災地情報や福島第1原発に意識が集中していたものだから、統一地方選が明日あることすら忘れている人も少なからずいるものと思いますが…(実際に、私の身の回りに今度の日曜が選挙当日だと知らなかった人がいました)。

統一地方選で新聞の全国紙レベルで取り上げられるのは、ほとんどが東京都知事選。

何かと話題の絶えない現都知事のほかにマスコミでよく取り上げられる面子ばかりがそろった都知事選は、俄然注目を浴びていますが、その他の自治体の選挙は取り上げられることも少なく、さびしいばかり…。

神奈川県知事候補などは候補者3人で、いずれもパッとしない顔ぶれ(当初は4人立候補とのことだったのが選挙公報では3人しかいなかったので、一人は立候補を取りやめた模様)。
いまいち地味なんですよね~。

まあ、話題性・スター性のある人=良い知事ではありませんから、派手さで競ってもしょうがないのですが…。

それにしても、相変わらず選挙公報に掲載されているPRは具体性にかけるものばかり。
特にみんなの党推薦の露木順一氏のアピールは非常に簡単なもの。

「こうしたら、このようになる」という方向性が明示されていないのは3氏に共通するところ。

とりあえず目標だけ掲げておけばよいという、これまでの選挙のあり方となんら変化無し。

現在は、震災復興に向けての具体的な方向性が示されなければならない時。
つまり、今回の地方選では復興に向けての具体的な行動計画が提示される必要があるのです。

ところが、震災直後の選挙ということもあって、各候補ともに災害への対応については「想定外」だったところに急遽、公約の中に「震災」をキーワードとした内容を盛り込んだものだから、ほぼ希望的観測とでもいうような公約や、原発反対メッセージとか、具体性に欠けるものが非常に多いというのが、選挙公約を見て感じるところです。

神奈川県知事候補の黒岩氏と東京都知事候補の東国原氏は、ともに太陽光発電設備(ソーラーシステム)の拡充によって電力不足解消につなげる意向を表明しているのですが、太陽光発電は発電効率の低さ、電力供給の安定性において原発の代替システムになりえないことがわかっていないために、簡単にソーラーを導入すればOKという安易さが見られます。

特に黒岩氏は、200万世帯にソーラーシステムを提供し、導入費用は県が負担するというようなことを言っていますが、はっきりいって企画倒れになること必至でしょう。

なぜなら、各世帯へのソーラーシステムの導入は公共性に寄与することなく、特定の世帯・事業所への光熱費負担の軽減になるだけだからです。

つまり、ソーラーシステムにより発電した電力は東電に売ることで電気代を相殺するという仕組みになっているため、ソーラーを導入した世帯・事業所は得をしても、それ以外の世帯・事業所にはまったくメリットがないのです。

それを特定の世帯・事業所に県が負担して設置するわけですから、公共性の観点から非常に問題があります。

結局は、ソーラーシステムを拡充させるにしても、発電プラントを設置して電力供給を補完するという方向に転換することになると思うんですけどね。

どうも、付け焼刃で情報を精査した結果導き出した政策提言になっていないところが、いまひとつといった感じです。

原発というハイリスクな発電方式に代わる効率的な自然エネルギーを選択することも必要なんですが、それと同時に蓄電技術の普及と向上を図ることも非常に重要だと思うんですけどね。

いずれにしろ、皆がタイムリーな話題(震災復興と原発問題)を取り上げてアピールしても、検討する時間的な余裕がない中での拙速な提言なんで、あまり期待できないというところが正直な感想ではあります。

【関連情報】
県知事選:黒岩氏が政策発表、太陽光発電を重点に/神奈川(カナロコ=神奈川新聞)
[都知事選]原発へのスタンスも注目に 主要候補(毎日jp)
特集ワイド:東京都知事選 自粛モード、誰のため?(毎日jp)
2011年東京都知事選挙候補者(NAVERまとめ)

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by mmwsp03f | 2011-04-09 10:27 | 政治・国際事情
巷には,無責任かつ無自覚なリーダーというものが跋扈しております。

以前,当ブログにて「成人の日に思うこと」という記事で書いたことですが,「政治・経済のリーダーの姿勢を見ても、はっきりいって『社会人としての自覚と責任』をもって行動していると思える人がほとんどいないのが現状です。」

この「社会人としての自覚と責任」が欠如しているリーダーの典型ともいえるのが,石原慎太郎東京都知事です。

彼は,またぞろ無責任かつリーダーとしての自覚が著しく欠如した発言を行っているようです。

ツィッターで話題になっていたブログ記事に下記のようなものがありました。

【関連情報】
石原さん、『親は知らない』にはそんなこと書いてありません!(山本弘のSF秘密基地BLOG)

SF作家の山本弘さんという方が,「週刊ポスト」での石原慎太郎都知事のインタビュー記事について辛辣な批評を行っています。
山本さんの言い分はもっともなことで,彼がいかにリーダーとしての立場を自覚せず無責任な発言を繰り返しているのかがわかります(とはいえ,「SLBMを積んだアメリカの戦略原潜は、最初から東シナ海にはいないはずである」と根拠が不明な記述もありますが・・・。SLBM搭載原潜のターゲットは中国・北朝鮮だけではないので)。

ちなみに,このブログ記事の元ネタは下記の記事で,思いっきり石原都知事の妄想と思い込みが炸裂した発言の数々を堪能?することが出来ます。

【石原都知事のインタビュー記事(抜粋)】
石原都知事 小学生が売春で1000万円稼ぐ日本人を嘆く

山本さんによれば,石原氏の発言の真偽を検証するためにわざわざ「親は知らない」という本を購入して読んでみたところ,彼のいう携帯を使った売春行為で300万,1000万も貯めてコインロッカーに隠している小学生の記述は全く見当たらなかったそうです。

政治の世界では,特にこういう何の検証もなく思いつきで発言しているような場面をよく見かけます。

皆さんよくご存知の鳩山前首相もよく無責任な発言を繰り返して,火に油を注ぐようなことをやっていますよね。
彼はまったく自分がトラブルメーカーであることに気がついていない。
だからこそ,「海兵隊の抑止力は方便」なんてことをサラッと言ってのけたりするわけです。

どうも政治家連中は,日本国憲法51条で保証されている免責特権を拡大解釈し,逆手にとっている傾向が無きにしも非ず。

日本国憲法第51条 
 両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。

だけど,石原都知事や鳩山前首相は表立って発言するから注目を浴び,批判もされるわけですが,その一方で自らの考えを公にしていない同調者が当然いるわけです。

このような同調者は,石原氏がその発言によって注目されることで影を潜めることになります(このような同調者をとりあえずステルス・シンパサイザー=a stealth sympathizerとでも呼ぶことにします)。

石原都知事が世間の批判を浴びながらも問題となる施策を実現できているのは,これらステルス・シンパサイザーが存在するからに他なりません。
つまり,石原氏が現に強い権力を行使できているのは,ステルス・シンパサイザーがいるからこそと言うことができると思います。

石原氏が注目されることで批判の矢面に立ち,自分たちのもとには批判の矛先が向けられなくなることで,行動がしやすくなるという側面があると思います。

ステルス・シンパサイザーは,都議会議員や官僚,その他政財界の有力者の中に多数存在するものと考えられます(でなければ,石原氏がこれまで強い権力を行使することはできないはずです)。

とはいえ,石原氏の考え方すべてに同調しているわけではなく,そのうちの一部について同調し,政策実現に協力しているものと思います。

問題発言を繰り返すリーダーに気をとられず,周りを見渡すことも肝心だと思います。
どのような人物でも,同調者・協力者がいなければ政策実現などできはしないのです。

リーダーのバックグラウンドを知ることが,無自覚かつ無責任なリーダーへ対抗するためには必要になってくるのです。

ちなみに菅首相は,有力なステルス・シンパサイザーによる後押しがないために,政策実現に支障をきたしているのでしょうね。
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by mmwsp03f | 2011-02-20 03:31 | 政治・国際事情

萌えキャラ化の効果

Excite!が配信しているニュースの中で,なかなか面白いものがあったので今回取り上げてみたいと思います。
それは,中国人が日本人や日本を蔑んで呼んでいる「日本鬼子」や「小日本」を,逆に萌え系の漫画キャラクターにしてネット上に公開した人がいるという話題。

【関連情報】
「日本鬼子」が美少女に大変身 中国ネットユーザー唖然(1)(中国社会 - エキサイトニュース)
「日本鬼子」が美少女に大変身 中国ネットユーザー唖然(2)(中国社会 - エキサイトニュース)
日本鬼子ぷろじぇくと まとめ@Wiki

当の萌え系キャラの画像は,「日本鬼子ぷろじぇくと」というサイトで見ることが出来ます。
主題歌入りのイメージソングまでつくられています。
派生系のキャラクターが多数作られているようで,三頭身ぐらいのミニサイズのかわいらしいものまであるようです。

これってすごくユーモアがあっていいと思うんですよね。
相手の罵りや蔑みを受け流して,逆にそのような悪意を抱くことがバカらしくなるような返しになっていると思うのは私だけでしょうか?

相手の尊大で悪意ある対応に,同じように敵意むき出しで向かっていったら当然衝突が起こりますし,問題をこじれさせる一方です。

それを萌え系キャラにしてしまうことで,相手の悪意や敵意を無意味化してしまおうという意図がみられ,このキャラクターを創出した人はなかなか考えているなと感心しました。

このキャラクターが浸透すれば,「日本鬼子」や「小日本」という言葉を発するたびに,この萌え系キャラが頭に浮かんできて,悪意や敵意も萎え萎えになることだろうと思います。

中国側では,「これはしてやられた」的な反応と「バカにしているのか?」的な反応に大きく分かれているようです。
「これはしてやられた」的な反応をしている人たちの中にも,「日本鬼子」萌え系化のもたらす効果を理解している人がいるようで,「一本取られたな」というようなコメントがネット上で見られたそうです。

「バカにしているのか?」的な反応をしている人々(どうやら多数派の模様)は,この萌え系キャラの意図と効果が理解できていないようで,単純にあきれた様子を示しているようです。
だけど,それほど大きな反発というわけでもなさそうです。

この記事を書いたライターさんは,「日本のマンガオタクたちが叩きつけた『萌え』という挑戦状にそれほどの効果はなかった」とコメントされていますが,この方もどうやら萌えキャラ化がどのような意味を持つのか理解されていないようですね。

そういえば以前,アメリカ人による日本人の蔑称である「ジャップ」を,自虐的なパロディとして使った筒井康隆が「ジャップ鳥」という小説を著していたのを思い出してしまいました。

今回の萌えキャラ化は「ジャップ鳥」とは系統が違いますが,これも充分パロディの要素を盛り込んでいるといえましょう。
このようなパロディの精神は,日本のオタク文化にも受け継がれているということなんでしょうか。
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by mmwsp03f | 2010-12-20 00:24 | 政治・国際事情