グロービッシュの効果
2012年 04月 09日
日本では、4月は新入学・新社会人デビューの季節なわけですが、これから新生活が始まるにあたって、ちょいと気になるのが「英語」問題。
ここでいう「英語」問題とは、新入生・新社会人に限らず日本人の多くは実践的な英語が使えないという問題と私が勝手に定義しておきます。
さて、以前このブログでも取り上げました巷で話題の企業の「英語公用語化」によって、それまで「英語なんかできなくったって、仕事は出来るからやらなくったっていい」と考えていた人たちも、「このまんまじゃクビになっちゃうかも…」、「世の中の動きについていけなくなっちゃうかも…」と「英語」を遅ればせながら、かなり意識するようになってきています。
ファーストリテイリングなどは今年3月に「英語公用語化」を実現するようなことを言っていましたが、このような動きに追随する企業が増えてきていますね(ところで、このファストリの「英語公用語化」って、うまくいってるんですかね?)。
これからは海外に積極的に進出し、外国人と取引するんだからビジネスパーソンとしては国際公用語となっている英語は話せなきゃいけないというので、英語の勉強にいそしんでいることと思います。
だけど一朝一夕で話せるようにはなりませんよね。
数ヶ月勉強しているけど、全然話せるようにならないし、相手の言っていることも聞き取れないという人って、かなり多いと思います。
なかなかうまくいかないときには、やはり発想の転換が必要なのかなと思います。
そこで要注目なのがグロービッシュ(Globish)という英語活用法。
グロービッシュとはGlobalとEnglishをかけあわせた造語で、非ネイティブ(日常的にその言語を使ってコミュニケーションをしていない人)向けの簡単英語のことです。
グロービッシュの基本的な考え方や会話例等を示す代表的な本。
グロービッシュは、語彙力のアップや多様な表現を覚えることを目指すのではなく、よく使われる単語1500語とその派生語に絞って簡単な表現で相手に伝えるコミュニケーション・ツールとして英語を捉えているところに特徴があります。
語彙を増やす、多様な表現を覚えても、実践的な会話の場面で使えなければ意味はない。すぐに出てくる簡単な表現で間違えてもいいから、とにかく自分から相手に伝えようとする姿勢が大切ということが強調されています。
【関連情報】
■著者のブログサイト→非ネイティブのビジネス英語術
■出版元の紹介ページ→通じなかった英語が一変する 驚異のグロービッシュ英語術(高橋書店)
当然のことながら、こういう方法は非常に安易であると批判が多いことも事実。
ネット上でもグロービッシュの学習効果について疑問・批判を提起しているサイトは数多くありますが、雑誌・書籍などでも批判的な評価を掲載しているものがあります。
その代表的なものが、下に示す晋遊舎という出版社が出している雑誌。
この雑誌には、巻頭特集として「巷でうわさの簡単英語に白黒つける! グロービッシュ辛口採点簿」というものが掲載されています。
ここでは、グロービッシュは「日本人には向いていない」という結論が示されています。
英語教育の専門家とネイティブ(国籍不明だけど、恐らくアメリカ人)のグロービッシュに対する評価、現役大学生のグロービッシュ学習体験による英会話力の変化について掲載されています。
【出版元の雑誌紹介】
■英会話完全ガイド 非ネイティブの英会話(晋遊舎)
さて、この雑誌の特集を読んでみて私の感想はといいますと、書かれていることには一理あるものの、何だか無理やり「日本人向きじゃない」とか大して効果がないという結論を導いている感が否めませんでした。
確かに、1500語を覚えれば会話ができるかという点については、自分から発話することはできても相手の言っていることが理解できるかという点については疑問が残ります。
ただしグロービッシュの目的は、まず相手に伝わる平易な表現を覚えることにあり、普段英語で話しかけられても、自分の言いたいことをいえなかった状況を打開することにあります。
関口雄一さんが『驚異のグロービッシュ英語術』の中でも書かれていますが、ネイティブと同じレベルの会話力を身につけることを目標にしてしまうと萎縮して失敗を恐れるようになり、なかなか会話に踏み切ることができないばかりか、インプットによって知識を増やすばかりで、それを効果的に活用してコミュニケーションをとることがかえって難しくなります。
つまり、「まず『通じれば十分』と気楽に向き合うこと」から始めることで、英語への苦手意識を克服することが英語上達の第一歩だということです。
英語教育の専門家(三田教育研究所の平田周さんという方)からの指摘に基づくグロービッシュに対する「日本人の弱点をカバーするようには出来ていません!」という評価は、少々的外れかなと思います。
「文法や慣用句に対するフォローは特にない」と書かれてありましたが、『驚異のグロービッシュ英語術』の中では簡単に文法の基本についての記載もありました(ただし、慣用句についてのフォローは特になし)。
いわば、それまでの英会話に対する苦手意識を克服するための手段であって、グロービッシュを提唱する人たちも英会話がすべてフォローされるなどとは考えていないでしょう。
関口さんは、本書において「まずはグロービッシュ単語に絞って、話す力をアップさせる」ことを提唱していることからも、グロービッシュ後のことを想定していることが容易にわかります。
あと、ネイティブのジョーンズさんもネイティブの会話表現はわからないだろうけど、ちゃんとネイティブには言っていることが伝わると評価していますし、会話が苦手な現役大学生が1ヶ月間グロービッシュをやってみたら、若干会話力がアップしたという実験結果が示されていて、まったく日本人に不向きというわけではないというのが実証されています。
それなのに、日本人には不向きと結論付けるのはおかしいと思いません?
なんだか、グロービッシュは役に立たないという結論ありきで過小評価しているように思えるんですが…。
いずれにせよ、英会話への心理的なハードルを下げ、とっつきやすくするという点から、グロービッシュはそれなりに効果が期待できると思います。
だけど、先にも述べたとおりグロービッシュはあくまで英会話のベースとして考えるべきもので、それで完結してしまうことがないようにすべきだとは思いますが…。
自分の言っていることが通じるようになれば会話が楽しくなってきて、自分からもっと色々な表現を覚えようとするでしょうから、そんな心配は杞憂に終わると思いますけどね。
ここでいう「英語」問題とは、新入生・新社会人に限らず日本人の多くは実践的な英語が使えないという問題と私が勝手に定義しておきます。
さて、以前このブログでも取り上げました巷で話題の企業の「英語公用語化」によって、それまで「英語なんかできなくったって、仕事は出来るからやらなくったっていい」と考えていた人たちも、「このまんまじゃクビになっちゃうかも…」、「世の中の動きについていけなくなっちゃうかも…」と「英語」を遅ればせながら、かなり意識するようになってきています。
ファーストリテイリングなどは今年3月に「英語公用語化」を実現するようなことを言っていましたが、このような動きに追随する企業が増えてきていますね(ところで、このファストリの「英語公用語化」って、うまくいってるんですかね?)。
これからは海外に積極的に進出し、外国人と取引するんだからビジネスパーソンとしては国際公用語となっている英語は話せなきゃいけないというので、英語の勉強にいそしんでいることと思います。
だけど一朝一夕で話せるようにはなりませんよね。
数ヶ月勉強しているけど、全然話せるようにならないし、相手の言っていることも聞き取れないという人って、かなり多いと思います。
なかなかうまくいかないときには、やはり発想の転換が必要なのかなと思います。
そこで要注目なのがグロービッシュ(Globish)という英語活用法。
グロービッシュとはGlobalとEnglishをかけあわせた造語で、非ネイティブ(日常的にその言語を使ってコミュニケーションをしていない人)向けの簡単英語のことです。
グロービッシュの基本的な考え方や会話例等を示す代表的な本。
グロービッシュは、語彙力のアップや多様な表現を覚えることを目指すのではなく、よく使われる単語1500語とその派生語に絞って簡単な表現で相手に伝えるコミュニケーション・ツールとして英語を捉えているところに特徴があります。
語彙を増やす、多様な表現を覚えても、実践的な会話の場面で使えなければ意味はない。すぐに出てくる簡単な表現で間違えてもいいから、とにかく自分から相手に伝えようとする姿勢が大切ということが強調されています。
【関連情報】
■著者のブログサイト→非ネイティブのビジネス英語術
■出版元の紹介ページ→通じなかった英語が一変する 驚異のグロービッシュ英語術(高橋書店)
当然のことながら、こういう方法は非常に安易であると批判が多いことも事実。
ネット上でもグロービッシュの学習効果について疑問・批判を提起しているサイトは数多くありますが、雑誌・書籍などでも批判的な評価を掲載しているものがあります。
その代表的なものが、下に示す晋遊舎という出版社が出している雑誌。
この雑誌には、巻頭特集として「巷でうわさの簡単英語に白黒つける! グロービッシュ辛口採点簿」というものが掲載されています。
ここでは、グロービッシュは「日本人には向いていない」という結論が示されています。
英語教育の専門家とネイティブ(国籍不明だけど、恐らくアメリカ人)のグロービッシュに対する評価、現役大学生のグロービッシュ学習体験による英会話力の変化について掲載されています。
【出版元の雑誌紹介】
■英会話完全ガイド 非ネイティブの英会話(晋遊舎)
さて、この雑誌の特集を読んでみて私の感想はといいますと、書かれていることには一理あるものの、何だか無理やり「日本人向きじゃない」とか大して効果がないという結論を導いている感が否めませんでした。
確かに、1500語を覚えれば会話ができるかという点については、自分から発話することはできても相手の言っていることが理解できるかという点については疑問が残ります。
ただしグロービッシュの目的は、まず相手に伝わる平易な表現を覚えることにあり、普段英語で話しかけられても、自分の言いたいことをいえなかった状況を打開することにあります。
関口雄一さんが『驚異のグロービッシュ英語術』の中でも書かれていますが、ネイティブと同じレベルの会話力を身につけることを目標にしてしまうと萎縮して失敗を恐れるようになり、なかなか会話に踏み切ることができないばかりか、インプットによって知識を増やすばかりで、それを効果的に活用してコミュニケーションをとることがかえって難しくなります。
つまり、「まず『通じれば十分』と気楽に向き合うこと」から始めることで、英語への苦手意識を克服することが英語上達の第一歩だということです。
英語教育の専門家(三田教育研究所の平田周さんという方)からの指摘に基づくグロービッシュに対する「日本人の弱点をカバーするようには出来ていません!」という評価は、少々的外れかなと思います。
「文法や慣用句に対するフォローは特にない」と書かれてありましたが、『驚異のグロービッシュ英語術』の中では簡単に文法の基本についての記載もありました(ただし、慣用句についてのフォローは特になし)。
いわば、それまでの英会話に対する苦手意識を克服するための手段であって、グロービッシュを提唱する人たちも英会話がすべてフォローされるなどとは考えていないでしょう。
関口さんは、本書において「まずはグロービッシュ単語に絞って、話す力をアップさせる」ことを提唱していることからも、グロービッシュ後のことを想定していることが容易にわかります。
あと、ネイティブのジョーンズさんもネイティブの会話表現はわからないだろうけど、ちゃんとネイティブには言っていることが伝わると評価していますし、会話が苦手な現役大学生が1ヶ月間グロービッシュをやってみたら、若干会話力がアップしたという実験結果が示されていて、まったく日本人に不向きというわけではないというのが実証されています。
それなのに、日本人には不向きと結論付けるのはおかしいと思いません?
なんだか、グロービッシュは役に立たないという結論ありきで過小評価しているように思えるんですが…。
いずれにせよ、英会話への心理的なハードルを下げ、とっつきやすくするという点から、グロービッシュはそれなりに効果が期待できると思います。
だけど、先にも述べたとおりグロービッシュはあくまで英会話のベースとして考えるべきもので、それで完結してしまうことがないようにすべきだとは思いますが…。
自分の言っていることが通じるようになれば会話が楽しくなってきて、自分からもっと色々な表現を覚えようとするでしょうから、そんな心配は杞憂に終わると思いますけどね。
by mmwsp03f
| 2012-04-09 18:33
| 教育