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まあ思いついたことをつらつらと書き綴っています(写真は奥多摩から見た富士山)。


by M.M@Kanagawa
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誤解される労働契約

使用者・労働者ともに、自分たちに直接かかわる非常に重要なことであるのにもかかわらず、労働契約というものを十分理解しているとはいえないのが現状です。

それを端的にあらわしているのが下の記事。

【関連情報】
日本の雇用契約書は薄すぎる 「20頁あっていい」という主張(J-castニュース)

タイトルからして労働契約(雇用契約)がどのようなものか、というよりも一般的な「契約」というものの概念がわかっていないのがありありとわかります。

契約書というものはページ数が多ければいいというものではありません。
社会通念上、合意されている事項については特段契約書に明記する必要はなく省略されていることがほとんどです。

上記記事にある入社2年目の社員の言い分に全く妥当性がないということは、社会通念上明白なのですが、そのことで契約書に記載されている事項が少なく薄っぺらいのも問題だという見解を示す社長もいかがなものかと思います。

もし、記事中のA社長の言うように入社2年目のC君のような社員に対応するために、仕事の心得などを逐一契約書に盛り込んでいたら20頁どころの話ではすみません。
A社長の言うような事項を記載するとなれば、そのうち「人に迷惑をかけてはいけません」というような道徳的なことまで盛り込まなくてはならなくなり、ページは無尽蔵に増え続けていくことになります。

ちなみに、一般の契約書のページ数が増えて分厚くなるのには理由があります。
それは、商品やサービスを提供する側が免責事項を事細かに記載しているからです。
つまり、責任回避のための言い訳をくどくどと並べ立てるから、契約書はえてして分厚くなるのです。

それに労働契約というものは契約書によって完結するものではなく、社内規範である就業規則等も労働契約の範疇に含まれるのです。

労働契約書には、必ず就業規則を遵守することが明記されているはずですので「僕は雇用契約書にサインはしましたが、それ以外のものは知りません」などという言い分は通用しません。
労働契約書にサインをしたということは、就業規則に従いますということに合意しているわけですから、このような逃げによって「誠実に職務を遂行する」ことを拒否できません。

当然のことながら、合理的手続きによって作成された就業規則への不服従は懲戒処分の対象となります。

さらにA社長は「就業規則は入社してからじゃないと見られないし、入社したって見せない会社だってある」と言っていますが、こういう認識の社長では相談するだけ無駄です。

就業規則は、労働契約法7条にあるように労働者に周知して初めて労働条件として認められるわけで、就業規則を周知させることは使用者の義務となっているのです。
したがって就業規則を見せない会社は、就業規則の規定を労働条件とすることが出来ないのです。

それから「入社してからじゃないと見られない」というのも誤り。
入社前に就業規則を見せることになんら規制はありませんし、労働契約にかかわることですから契約時には積極的に見せなければならないものです。

それを怠っておきながら、契約書に何でも書かなきゃならないというのは筋が通りません。

少なくとも労働者を雇用する立場の人物が、労働契約について無知すぎるというのはいかがなものでしょうか?

C君も非常識ですが、A社長もかなりな非常識です。

どうも契約書は責任回避のための道具と考えられがちですが、契約というものは本来約束事なわけですから、そこのところ履き違えてはいけません。

まずは、C君もA社長も契約は約束を守るために締結するものという基本中の基本のさらに基本を学ぶべきと考える次第です。
by mmwsp03f | 2011-03-05 09:49 | 労働問題