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まあ思いついたことをつらつらと書き綴っています(写真は奥多摩から見た富士山)。


by M.M@Kanagawa
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作り話の効果―メディアの影響力

この度,カナダでユニコーンが発見されたというお話の顛末がエキサイトニュースのコラムに掲載されていました。

【関連情報】
“伝説の生き物”ユニコーン発見騒動のてん末、公開された動画の真相は?(コラム総合 - エキサイトニュース)

カナダのトロント在住ピーター・ヒッキージョーンズという人物が,ドンヴァレーという渓谷でユニコーンを撮影したので分析してほしいとトロント州立オンタリオ科学センターに依頼をしたそうで,その映像が下のもの(YouTubeで公開中)。
まずは,ご覧あれ。

【Rumoured Unicorn Sighting Reported In Don Valley】


記事によれば,「さすがに“伝説の生き物”だけあって、『フェイク』の声が多く挙がった」とありますが,皆さんどう思われました。

そう,これはまさしく「フェイク」です。

映像をご覧いただいた方はお分かりだと思いますが,たてがみが揺れている以外にユニコーンが動いている様子はなく,角をくっつけた白い馬の模型が引っ張られているのが容易にわかる映像です。
走っていりゃあ,足は動くし体が上下するのは簡単にわかりますからね,伝説の生き物でなくとも「フェイク」だと見破るのは容易です。

ところが,トロント州立オンタリオ科学センターは「本物のユニコーンが目撃されたのか、立証したい」と大真面目だったとか。
イギリスの大衆紙サンに「仮にこの動物を目撃しても「突然動いたり、フラッシュ撮影を行ったりなどしないように」という談話を掲載したり,ユニコーン目撃情報収集のための「緊急ホットライン」まで開設しようとしていたそうです。

なぜ,見るからにウソくさい映像にここまで入れ込んでいるのかというと,この騒動自体オンタリオ科学センターが仕組んだものだったからというのがオチ。

自ら企画した神話上,伝説上の生き物に関する展示の宣伝のために,このような騒動を演出したんだとか。
何かの宣伝のために,こういう騒動を仕組むというのは使い古された手法でだったりしますが,それでも注目されるんですよね。
記事によると案の定大騒ぎになったそうで,問い合わせも殺到した模様。

後になってから笑い話で済んだから良いものの,これが後々まで尾を引くこともありえるということを考えておかないと大変なことになります。

例えば,下記のような事例。

【関連情報】
イタリアでテレビ局に苦情殺到!『パラノーマル・アクティビティ』CMで子どもがパニック発作(シネマトゥデイ)
■『パラノーマル・アクティビティ』プロモーション映像


メディアの影響力というのはバカになりません。
マス・コミュニケーション論では,上記の『パラノーマル・アクティビティ』のCMが引き起こしたようなパニック現象に見られるメディアの影響力の強さや即効性を,「皮下注射モデル」または「弾丸モデル」と呼んでいます。
これは,メディアが提供する情報が強力な印象を与えることで,大衆を一定の方向へ行動するよう操作することにつながることを示唆すると同時に,思いがけない反作用を及ぼす可能性があることを示唆しています。

オンタリオ科学センターはインパクトある宣伝手法をとることで注目を集めることを意図していますが,一歩間違えば『パラノーマル・アクティビティ』のような状況に陥ることも考えられなくはないのです。

公的な機関であれば,自ずとそのような宣伝手法には慎重になるべきところですが,記事を見る限りではそのような認識は微塵も感じられません。
展示の成功のためには何でもありという考え方は非常によろしくありません。

下手をすると,この騒動が一人歩きしてユニコーン実在を証明する映像として大いに喧伝される可能性もありうるのです。
「『本当であって欲しい』と願う人、特に女性が多い」ということは,自らの願望を映像に反映させていた人が多かったということであり,一人歩きする可能性が高いことを示しています。

この映像が思いがけない反作用として,社会に大きな波紋を及ぼさなければよいのですが・・・。
by mmwsp03f | 2010-10-20 12:58 | 社会問題一般