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まあ思いついたことをつらつらと書き綴っています(写真は奥多摩から見た富士山)。


by M.M@Kanagawa
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杜撰な採用活動のツケ

現在,GIGAZINEというブログメディアが社員募集をしているそうです。
ある意味「人材不足」による募集ということですが,人手が不足しているわけではなく,記者・編集者としての資質に問題のある社員がいるため,新たに社員を募集して体勢を立て直したいということのようです。

【関連情報】
人気ブログメディア『GIGAZINE』が涙の人材募集「金の分しか働かない働きたくない面倒くさい書きたくない」【ネットコラム - エキサイトニュース】
【求人募集】GIGAZINEのために働いてくれる記者・編集を募集します

求人募集の冒頭には長々と「募集に至る経緯」というものが記されているのですが,愚痴のオンパレード。

「手が足りないのにもかかわらず、人を雇えば雇うほど私の負担が増していき、ほかの編集部員の給料を出すために月給も何もかも私が一番低いワーキングプア状態で、もう心身共に限界に達して倒れかけました」というような,同情を誘うことを意図した記述まで見られます。

さて,この記事ならびに求人募集を見て思ったことですが,GIGAZINEの編集長は見事なまでの勘違いをしています。

>GIGAZINEで働きたかったわけではなく、どこでも金さえもらえれば良かった、そういう人材を私は雇ってしまったのです。これが大きな間違いでした。
>怒られないとこちらの言うことを聞かないというのは、かなり低次元かつ低レベルで幼稚なことだと私は思うのですが、そういう社員ばかりを雇ってしまった私にも確かに責任があります。

というような言辞は見られるのですが,「雇ってしまった」ことを悔やんでいるだけで,どのような戦略的展開を考えているのかがまったく記されていません。

ただ単に,ニュースサイトの仕事は他の仕事とは違うとか,自分と同じ志を持った人に来てほしいということを主張するばかりで,これまでの採用方法,人材育成の手法についての反省が見られません。

「募集に至る経緯」見る限りでは,問題社員は最初から問題行動をとっていたわけではなく,編集長の組織運営の失敗によって問題行動を起こすようになっていったようです。
そのことがわかっているのにも関わらず体制を立て直すよりも以前に,自分に都合の良い人材を補充することでその場を凌ごうという安易な発想が見られます。

そんなことをやっているようでは,また同じ失敗の繰り返しになるであろうことは容易に想像がつくと思います。

今回の求人募集の課題は,記者・編集者としての基本的なスキルを見抜くことなわけですが,「『価値観』の一致と不一致を今回は最重要視」といっているところから,ひょっとしてそのことが判っていないんじゃないかと思ったりもします。

>GIGAZINEで働くという事は、普通の雇用主と労働者の関係とはまったく違うのです。「ニュースサイトで記事を書くというのは、普通の労働とは絶対に違うのだ!」ということを事前にちゃんと理解していただきたいのです

という記述を見ても,あー判ってないなと思うわけです。
編集長におかれましては,労働契約法と労働基準法をスミからスミまで熟読されることを推奨します。
まあ,意識の問題を語っておられるのでしょうが,これって明らかに「GIGAZINEはコンプライアンスを無視します」と宣言しているのと同じなのですが,よほど腹に据えかねたのか,正常な判断ができない状態になっているようです。

それから「普通の労働とは絶対に違うのだ!」ということを強調されていますが,これはある意味職業差別に通じる考え方だったりします。
自分がなすべき仕事はなんであれ,自分の責任で全うするというのが労働のあるべき姿です。
GIGAZINEの仕事だけが特別なのではなく,仕事とはすべからく責任を持って取り組まなければならないものなのです。
それをちゃんと部下に教えてこなかったことが今回の問題の要因であり,社員の問題行動を助長させていることにつながっているはずなんですが…。


当然のことながら,求人についての要件が最後に付されているのですが,皆さんはこれを見てどう思われますか?

◆募集期間
8月2日(月)~8月9日(月)23時59分まで

◆募集職種
記者・編集

◆勤務地
大阪府大阪市

◆仕事内容
ニュースサイト「GIGAZINE」(http://gigazine.net/)の記事作成・編集

◆給与
応相談

◆勤務時間
応相談

◆勤務形態
応相談

◆応募資格
前歴・職歴・学歴・年齢・性別は就労できるのであれば一切問いません


私がこれを見た感想。
まじめに採用する気があるのか?

採用条件というのは,就職活動をしている側にとっては,応募するかどうか,あるいは入社するかどうかを判断する基本的な材料となります。
それを「応相談」で済ませていることから,明確な採用計画自体が存在しないのではないかと思えるわけです。

しかも,「給与」「勤務時間」「勤務形態」をぼかしているところから,かなりキツイ条件で採用しようと考えていることも匂わせています(「募集に至る経緯」の内容を見ても,キツイ条件で採用しようと考えていることがわかります)。

しかも,仕事内容についてもニュースサイトの「記事作成・編集」だけであって,具体的なことは何も記されていません。
ただ理念を語るだけでは,誰もついてきません。
あくまでGIGAZINEはビジネスであり,好きなことをするのだから労働条件は二の次だという発想では,長続きしません。
すべからくビジネス(経済)というものは,報酬の交換によって成り立っているものです(社会的交換理論)。
実績に見合った報酬を明示せずにGIGAZINEというビジネスに参加せよというのは虫の良すぎる話でしかありませんし,それを無視してビジネスを語ることは滑稽でしかありません。

ビジネスとしてのGIGAZINEに参加することによって,社員にはどのようなメリットがあるのですか?
自分たちのメリットだけを語って,誰かがついてくるとお考えですか?

経営戦略の見えないビジネスに有能な人材が集まることはほとんどありません。
愚痴を言う前に,明確な人事戦略と事業計画を立案し,場当たり的な採用活動ではなくビジネスの基本スキルを見分ける採用方法を確立することが,先決だと思いますが…。
by mmwsp03f | 2010-08-02 21:49 | 労働問題