まあ思いついたことをつらつらと書き綴っています(写真は奥多摩から見た富士山)。


by M.M@Kanagawa
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第九陸軍技術研究所(その5)

d0104959_11423250.jpg【第二科研究棟跡】

現在の登戸研究所資料館。
最近まで農学部の実験室として使われていた施設。

ここで,生物化学兵器の研究開発が行われていました。


登戸研究所第二科が開発して実用化したものを一部ピックアップすると,以下の様なものがあります。

●秘密インキ
乾くと透明になり肉眼では判読不能になるインキ。各国で一般に利用されている発見法で発見さえては元も子もないので,特殊な文字消失インキとその現出法が考案された。
薬剤によって現出する方法と紫外線を照射して現出させる方法を考案。

●小型偽装カメラ
関東軍等の野戦憲兵用の装備として開発。かばん型カメラとライター型カメラがある。

●偽装爆弾
缶詰型爆弾と呼ばれるもので,小型・中型の2種類を開発(中型爆弾の爆破効力は半径7mとのこと)。
即時点火式と時限点火式の2種類がある。

●殺傷・放火謀略機材
万年筆型破傷器という毒針を仕組んだ殺傷器具や消音器付小型拳銃,雨傘型の放火機器(偽装簡易火炎放射器)などがある。

これらは憲兵用と陸軍中野学校(秘密戦実行部隊の養成機関)向けの資材だったりします。

d0104959_1135233.jpg【弾薬庫跡】

資料館の斜め向かい側の草むらの中にひっそり閑と存在します。
開発・製造された資材は,このような貯蔵施設に保管されていました。

弾薬庫という割には,たいして大きくない施設ですが,通常兵器と違って開発品はわりと小型だったので,この程度の大きさでよかったのでしょう。
このほかにも,所内にはいくつか貯蔵施設があったそうです。


この他にも,それなりに高度な写真加工技術・暗号伝達技術等も開発されています。
例えば,写真画像の中に微小な暗号文を埋め込む技術なんていうのもあったりします。

ところが,日本は情報の秘密化・暗号化については非常に甘い考えを持っていたために,このような高度な暗号技術を開発しても,有効に活用することはできませんでした。

例えば,怪力電波を「く号研究」,風船爆弾を「ふ号研究」などと暗号名に頭文字をつけるところからも,軍部の暗号に対する意識・発想がいかに低いかがわかります。

かのミッドウェー作戦が失敗したのも,簡単に見破られるような暗号通信法を採用していたことが大きな要因です。
しかも,ミッドウェー戦の後もバレバレ暗号を使い続けたという杜撰さ。
何が失敗の原因だったのかを学ばなかったことが,日本が敗北した最大の原因だったりします。

情報戦の先進国であった米ソ英と比較すると,なんともお粗末です。

資料館には「雑書綴」の写しが展示してありました。
これは登戸研究所でタイピストとして勤務していた所員の方が,発注書などの帳票で打ち間違えたものを個人的に保管していたものだそうです。

この所員の方は,「青春の思い出に」と終戦時のドサクサに家へ持ち帰ったそうなのですが,その際に上司に「持って帰っていいですか」と聞いてOKをもらったといいます。

登戸研究所は仔細な事項に及んで極秘扱いであったにもかかわらずこの体たらく。
機密文書・重要文書が含まれていなかったとはいえ,最重要機密である登戸研究所の情報をこんな形でもらしてしまうとは,日本が情報管理にいかに疎かったかがわかります。


さて,登戸研究所が開発したものの中で恐らく最も役に立ったのは,第三科が開発した偽札製造技術であろうと思います。

とはいえ,この法幣(国民党政府発行の通貨)偽造も最初からうまくいっていたわけではなく,日中戦争勃発当初に実験製造された偽札は,使用に耐えないひどいものだったらしいですね。

当時の法幣は米英の印刷業者の高い印刷技術によって製造され,かなり偽造は難しいものだったようです。

それが,日本軍の南京攻略によって法幣の原版を摂取できたところから,偽札のクォリティは格段にアップしたとのことです。
ところが,紙質が違う,紙幣に刻印された微妙な凹凸がない,インクの色が薄いなどによって案外簡単に贋物と見破られてしまったようです。

d0104959_1201938.jpg【偽造法幣】
登戸研究所資料館所蔵

(登戸研究所資料館より撮影およびブログ掲載について許可をいただいています)

6連になっているのが偽札で,右側に陳列されているのが本物。

この偽造法幣の元となった本物が一緒に陳列されていなかったので,資料館を案内してくれた人に聞いてみたところ,古銭商などにあたっているが残念ながら入手できていないとのこと。
比較対象がないと,どの程度の精巧さなのかわからないので,ちょっと残念。

もともと贋札は,これをばら撒くことで通貨の信用を失墜させて敵国の経済を混乱に陥れることを意図して製造されたものですが,実際には思ったほどの効果はなかったそうです。

で,本来の目的とは違った現地で物資調達の際の支払いに偽造法幣が使用されたとのこと。
そして,日本軍は偽札を使って通常の取引価格より高値で大量に商品を購入していたものだから,便乗値上げや品不足により物価がえらく上昇したなんてことが起こったそうな。

本来の目的とは違った使用方法で局地的に市場を混乱に陥れたということで,多少は偽造法幣の効果はあったようです。
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by mmwsp03f | 2010-06-23 12:30 | HP(歴史)