まあ思いついたことをつらつらと書き綴っています(写真は奥多摩から見た富士山)。


by M.M@Kanagawa
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第九陸軍技術研究所(その4)

風船爆弾はアメリカ本土爆撃の他に,第二科が開発した細菌兵器(牛疫ウィルス)を搭載して攻撃をすることも検討されていました。
これは,感染致死率100%の細菌兵器を投下することで家畜を死滅させ,アメリカの食糧供給に壊滅的打撃を与え,戦局を有利に導こうという計画です。

しかし,細菌兵器使用が露呈することによるアメリカ軍の報復を恐れた首相兼陸相の東条英機は,最終的に牛疫ウィルスの使用を承認しなかったといいます。

アメリカのノンフィクション作家ジョン・トーランドは東条英機を非常にまじめな人間だとし,他の歴史研究者からも実務家として優秀な人物との評価もあるので,細菌兵器を使用した場合のアメリカの対応を冷静に勘案して,そのように判断したとしても不思議はありませんが,理由はそれだけではないと思います。

史上初めて大規模な細菌兵器の使用を決定することへの恐れもあったでしょうし,何よりも細菌兵器は取扱いが難しいということが大きなネックになっていると思います。
つまり,風船爆弾に搭載して放ったとき,間違って日本の領域に落ちる可能性もありますし,事故によってウィルスが漏れ広がる可能性も否定できません。

東条英機の細菌兵器使用不許可は,このような事態も想定しての判断だったのではないかと思われます。

さて,この細菌兵器の開発を行った第二科ですが,関東軍防疫給水部(暗号名:731部隊)との関係性が指摘されています。

731部隊は,森村誠一氏の『悪魔の飽食』(角川書店)によって生物化学兵器の開発の際に人体実験を行っていたことが暴露されて一躍有名になりましたが,登戸研究所の所員も中国人捕虜や囚人を使って人体実験をしており,そのことは元登戸研究所所員の伴繁雄氏(技術少佐で第一班責任者)の著書『陸軍登戸研究所の真実』(芙蓉書房出版)で明らかにされています。

悪魔の飽食 新版―日本細菌戦部隊の恐怖の実像! (角川文庫 も 3-11)

森村 誠一 / 角川グループパブリッシング


陸軍登戸研究所の真実

伴 繁雄 / 芙蓉書房出版



伴繁雄氏は,731部隊の隊長である石井四郎軍医中将が開発した石井式濾過機にセットして使う濾過筒(浄水器のフィルター)を赤穂高校の生徒に提供し,登戸研究所と731部隊の深いかかわりを示した人物です。
登戸研究所資料館に所蔵されている石井式濾過筒は,伴氏が大量に保管していた濾過筒のうちのひとつです。
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【石井式濾過筒】
登戸研究所資料館所蔵

(登戸研究所資料館より撮影およびブログ掲載について許可をいただいています)

登戸研究所保存会編『フィールドワーク陸軍登戸研究所』によれば,731部隊と登戸研究所員は連携して生物化学兵器開発を進めていて,登戸研究所員は南京に出張して青酸ニトリール・青酸カリ等の合成毒の他,ヘビやトリカブト等の毒性植物による天然毒を投与して,人体実験を繰り返していました。

d0104959_17141388.jpg【動物慰霊碑】

明大生田キャンパスの正門の守衛所裏には,およそ3mの高さの慰霊碑があります。

実験動物の慰霊のために建立されたとされていますが,あまりにも立派な慰霊碑なので,人体実験で死亡した中国人捕虜や囚人たちをも慰霊したものではないかと考えられています。

この慰霊碑は,1943年に東条英機陸相から「陸軍技術有効章賞状」とともに授与された賞金から拠出して建立されたのですが,この慰霊碑の存在は一般の所員には認知されていなかったそうです。

実験動物に対する慰霊碑としては大きすぎること,特定の所員のみが存在を知り,一般所員には知らされていなかったことなどが,人体実験の犠牲者に対する慰霊のための石碑として建てられたと想定する理由となっているようです。
つまり,人体実験を知る者たちが良心の呵責から,このような慰霊碑を建てたのだろうということです。

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【陸軍技術有効章賞状】
登戸研究所資料館所蔵

(登戸研究所資料館より撮影およびブログ掲載について許可をいただいています)

この「陸軍技術有効章賞状」は,登戸研究所による数々の秘密兵器開発の実績に対する功績をたたえるもので,生物化学兵器開発に対して授与されたものではありません。

実用に耐えない兵器(例えば怪力電波)に金と時間を費やしたものもありましたが,実用化した兵器や謀略資材も数多くあったようです。

次回は,実用化された兵器・資材を中心に見ていきたいと思います。
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by mmwsp03f | 2010-06-22 18:07 | HP(歴史)