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まあ思いついたことをつらつらと書き綴っています(写真は奥多摩から見た富士山)。


by M.M@Kanagawa
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もういちど読みたいか? 山川日本史・世界史

歴史教科書の老舗として有名な山川出版社の「大人向け」の教科書として発売されている「もういちど読む山川日本史」と「もういちど読む山川世界史」が,発売以来好調に売り上げを伸ばしているそうです。

山川出版社のもういちど読むシリーズのPRページ

ちょっと前に話題になり,マスコミにも大々的に取り上げられたもんだから,山川出版社は得意満面といった感じです。

こういう教科書焼き直し本がシリーズ累計でも50万部を突破するというのは異例のことで,山川が鼻高々なのはわからないではないですが,だからといって「本物の歴史が読める本」というキャッチコピーはいかがなものかと思うのですが…。

なんで,このような教科書焼き直し本が売れるのか,正直理解に苦しむところです。高校時代に歴史がイヤになった人って,大抵教科書に書かれていることがわからないというのが圧倒的多数だったんですよね。

私は以前進学塾で世界史を教えていたことがあるのですが,歴史が苦手という受講生は判を捺したように教科書が面白くない,教科書を読んでいても理解できないということを言っていました。そのような人たちが,本当に「もういちど読む」シリーズを買ったりするのでしょうか?

じゃあ,逆に歴史好きの人はどうかというと,教科書の知識など物足りないのでまず買いません。概説書を買うのであれば,わざわざ1575円払って教科書焼き直し本など買わずに,すこしプラスアルファしてこっちを買っちゃいますね。

概論 日本歴史
1,995円
吉川弘文館


姉妹サイトの「歴史の隙間―とある事件の記録」のコラムでも書いていますが,教科書は十分な説明もなく,ただ単にこういうことがあったということを唐突に出してくるので読む側はチンプンカンプン,どうしてその事件が起こったのかという本質的な部分がわからないままになってしまうんですよね。だから,歴史が苦手な子たちが「わからない」を連発するわけです。

知識量はすっかすかで,しかも不正確な情報を盛り込んでいたりします。はっきり言って,過去に明らかな間違いといえる情報を平気で載せていました。

かなり前の話ではあるんですが例を挙げると,

*コロンブスが,1492年にはじめてアメリカ大陸を発見したと書かれてあった(ヨーロッパ人では,1001年にデンマーク人のレイフ・エリクスソンが現カナダ領ニューファウンドランド島に到達しています。これはずいぶん前から通説となっていた事実。しかもコロンブスが1492年に到達したのは西インド諸島で,大陸にすら到達していない)
*ロシア十月革命でボリシェヴィキが冬宮に突入する画像が掲載されていた(これって,エイゼンシュタインの映画のワンシーンを切り取った画像で事実じゃなかったんですよね)。

つまり,教科書は事実確認がイイカゲンだったりすることもあるってことです。

それに,さらっと歴史をおさらいして本当に面白いんですかね。歴史に興味をもつ人って,歴史上の人物に関心を抱く人が多いと思いますが,その人の面白エピソードは教科書にはほとんど載っていません。

教科書焼き直し本よりも,もっと面白い歴史の本はたくさんあるんですから,皆さんそちらの方を読みましょうよ。「本物の歴史」は教科書なんかじゃわかりません。歴史の本質は表面さらっとなでる程度の記述じゃ,絶対わかりませんから…。
by mmwsp03f | 2010-04-15 18:01 | HP(歴史)