ツッコミどころ満載の憲法改正草案(その4)
2012年 05月 07日
それだけ、自民党の憲法改正草案が超一流のできの悪さ故とご理解ください(笑。
【基本資料】
■自民党:日本国憲法改正草案対照表(PDFファイル)
憲法改正においては、憲法の存立を基礎づける根本原則を損なう改正を行うことはできないというのが通説となっています(これを限界説といいます)。
ところが自民党案では、この憲法の根本原理を大きく損なう改正案が提示されています。
現行憲法では「公共の福祉」として示されていたものが、自民党案12条・13条では「公益及び公の秩序」と変えられています。
これは多くの人から批判されていますが、なぜ批判されるかというと「公共の福祉」と「公益及び公の秩序」では全く意味合いが異なるからです。
東京新聞の記事(4月27日)に記載されている通り、「個人同士の関係よりも、国全体の秩序が優先される趣旨」へと変えられています。
「公共の福祉」とは、「自分と他者の人権が衝突した際にバランスよく調整する」(東京新聞記事)人権の調整原理であり、前提として諸個人の基本的人権を尊重するという考え方をベースにしています。
自民党案の「公益及び公の秩序」は、人権を享有する諸個人を超えた存在(つまりは国家)の利益・秩序ということであり、これに従うことを要求しています。
つまり、主権者たる国民の権利を尊重する以前に「公益及び公の秩序」を尊重しろということに他ならないのです。
なお大日本帝国憲法27条には、下記のような規定があります。
第27条 日本臣民ハ其ノ所有権ヲ侵サルヽコトナシ「臣民(天皇の臣下たる民)は所有権を侵害されないよ。ただし法律で定める公益のために必要な場合を除いてね」という規定ですが、これと同じことが自民党案13条において所有権に限定されない基本的人権全般に適用されているのです。
2 公益ノ為必要ナル処分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
このこと一つとっても、憲法の根本原則を大きく損なう不当な改正案ということができます。
他にも数多くのツッコミどころがありすぎて、いちいち取り上げることができません。
他の部分については別の批判者の方にお任せするとして、最後に一点だけ…。
それは、憲法改正条項に係わるところです。
自民党案100条1項
この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする。
現行憲法第96条1項自民党案と現行憲法を比較してお分かりのように、憲法改正のハードルが下げられています。
この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
つまり、自民党はこの改正案が可決されたあとも、憲法を追加改正する気満々ということです。
自民党は憲法全般に手を加えてきていますが、これをすべて通す気はないと思います。
というよりも、彼らが改正の中心にすえている安全保障・緊急事態・憲法改正関連の条項を可決の必須条件として、これを通すことに力を注いで、それ以外のところは可能であれば通すつもりだと思います。
なかには、とりあえず変えてみましたという「どうでもいいけどとりあえず改正」という感じのものも見受けられますので、ほとんど犠牲にしても本丸だけは通すつもりでしょう。
自民党サイトの保利耕輔・自民党憲法改正推進本部長のインタビュー記事を見てみても、自民党がどこを本丸と見据えているかが判ると思います。
【関連情報】
■今こそ自主憲法の制定を(自民党¦Lib Dems)
■保利耕輔・憲法改正推進本部長インタビュー(自民党¦Lib Dems)
それに、改正条件を緩和できれば、徐々に自分たちの思惑通りに改正を進められる可能性が高まるというものです。
それにしても、新しい時代に即しつつ憲法の根本原理を保持することが可能だと、うまいこと偽装したつもりでも、多くの人がその危険な思惑を看過してしまうお粗末な改正案です。
こんなものがすんなりと「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」による発議を経て、「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成」を得られると思っているのでしょうか?
ただでさえ、自民党の支持率は低いままですし、少なくとも「過半数の賛成」による「国民の承認」は得られそうにありませんね。
# by mmwsp03f | 2012-05-07 16:57 | 政治・国際事情 | Trackback | Comments(0)
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